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29.2019/10/01 [笑う小説]

29.「じゃあ行くか」
「ああ、頼む」
「忘れ物があった。あまり使わないと思うけど、これをヘルメットの脇の穴に嵌めてくれ」
「これでいいか。でもこれは」
「その先端にある円盤を口のところに持っていけば、太郎の日本語を俺たちの言語にしてくれる」
「日本語も漏れるな」
「ああ、ちょっとでも大丈夫だ、俺も試してみた」
「ちょっと聞いて良いか。みんなはここでは何語で話しているんだ」
「もちろん俺たちの言葉だ。そうしないと忘れるから」
「そうだよな」
「そんなことより、早く行こう」
「遅れるのか」
「いや、遅れる訳がない。向こうに着く時間はセットしてある」
「わかった」
「じゃあ行こう」と、次郎が言うと同時に目の前の壁に穴が開いた。
「じゃあ言って来る」と、言って俺は穴に頭から入った。なにも見えないと思いながら体を前に倒し、上半身が穴に入ったと確信すると同時に、俺は何かに包まれていると感じた。一瞬で向こうの穴から出ると思っていたが、そうではなかった。最初に出た穴の先は、宇宙そのものだ。星干しが見える。突然星干しが光の帯になって走った。いや、俺の方が飛んでいるんだ。寒さも何も感じない。俺を包んでいるなにかが俺を保護してくれているのだろう。
突然、すべてが闇になった。次の穴に入ったのだ。と思う間もなく、大きな星が見えてきた。とてつもない速度で向かっている。氷だけの世界だ。その真ん中にとてつもない速度で向かっている。考えられない、前を見ているだけだ。目の前が凍りだけしか見えない。星の丸い輪郭は一瞬で消えたのだ。どんどん近付く。氷の塊同士がぶつかり合っているのが見える。
が、まだ穴が見えない。と、思うと同時に氷の上に一点の黒い点が見えた。それが俺のスピードに合わせて大きくなる。体にぶつかるのかと思い始めたと同時に俺は穴の中に消えた。
そして一瞬で、星干しの間を飛んでいた。真正面にある光輝く星がどんどん大きくなる。太陽だ。もちろん地球を照らす太陽じゃない。まさかあれに向かって、いやあんなところに次の穴があるはずが、という思いも無視しているかのように、俺の体は、その太陽に向かっている。どんどん近付く。と同時に僅かにずれていることに気づく。しかし、あまり離れていない。不安になる。太陽のフレアの中に入ったら俺は一瞬で燃え尽きる。逃げようがない。諦めるしかないのだ。と思っている一瞬の間に太陽のそばを横切った。直ぐに、青い星が見えてきた。と同時に、俺は飛びだしていた。
「ウワー、あいつら俺にこんな事をしたのかふざけやがって」と、日本語が聞こえてきた。まだ翻訳のスイッチは入れていないはずだ。起き上って後ろを振り向くと、昔見た俺の腹から出てきたあの男が立っていた。
「お久しぶりです」と俺は言った。
「お前、あの時の地球人じゃないか。なんでこんなところに来たんだ」
「何と言ったら良いんでしょうね。それよりも、あなたのおかげで無事、ここにたどり着けました。ありがとうございます」
「あいつら俺に穴を付けたな、お前もぐるか」
「いえ、私は何も知りません」
「そうだよな。地球人のお前が知る分けがねえ」
「一つ聞いて良いですか。あなたが話しているのは、日本語ですよね、なぜこの星の言葉で話さないんです」
「う~ん、それがよう、俺この星の言葉を忘れちゃったんだ。もう誰とも話せねえよ」
「それは大変ですね。よし私が翻訳をして上げますよ」
「地球人のお前がそんなことができるのか」
「できます。このヘルメットの中に翻訳装置が入っていますから。なんとかなりますよ」
「お前いい奴だな。よろしく頼む」
「私の方も、ここは初めての星ですから、色々教えてください。お願いします」
「おう、まかしてくれってことよ」

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28.09/30/08:48 [笑う小説]

28.良く見たら、チャックは四つあった。好きな位置に動かすことができる。どうにかこの服を着て、靴も履いた。これもチャックで繋がっている。服は驚くほど弾力がある。皮膚にピタリと付いているが、圧迫感がない。しかし、体形がはっきりとわかる。鏡に映っている。一度見れば十分だ。したくもないけど脚の短さを再確認してしまう。
「これを被ってくれ」と次郎が言った。
「ヘルメットか」
「ただのヘルメットじゃない。これを被っていれば、どんな言語でも自分の知っている言語で聞ける。これは日本語用だ」
「マスクは」
「いらない。ここの空気とほとんど同じだ。ただ、花粉が多い。アレルギーは地球ではなくても、我々の星でならないとは言えない。それに対応する人間用の薬はない」
「どうしたらいい」
「マスクしかないだろう。このショルダーに一杯入れてある。これで対応してくれ」開けたショルダーの中には、どこにでもあるガーゼのマスクがある。どう見ても日本製だ。
それを見てから、次郎を見た。次郎は何事もなかったように、別のものを手に持って話し始めた。
「これは銃だ。もちろんウイルス銃だ。この星にくる前から、我々の仲間はすでに、体の変化を楽しみ始めていた。俺たちは体を好きなように出来るが、それを楽しみとしてはいけないという道徳がある。それを、ウイルスに感染した者たちは楽しんでいる。だから、ほとんどの者が裸状態だと思う。この銃の玉は、ちょっと大きめな棘(とげ)のような形所をしている。だから、そんなに飛ばない。ここで撃ってみると、5メーターほどしか飛ばないが、我々の星であれば、もっと飛ぶはずだ。我々の星の名前を日本語で言えば、水球が良いだろう。海が広いんだ。他に質問はあるか」
「食事はどうしたらいい。水は飲めるのか」
「沸かしてから、飲んだ方がいいだろ、でも、果物がいっぱいある。ただし、体に合うかどうか分からない。その時はこれを使え」と次郎が言って差し出したのは、キャンプで使っている飯ごうだ。その中に白米が入っている。俺は一体どこへ行くんだ。キャンプ場じゃないよな。頭が混乱してきた。でも、ロケットに乗っていく宇宙旅行じゃない。こっちの穴から別世界の穴への旅だ。途中で飯を食うわけじゃない」と言いながら、次郎はショルダーにその飯ごうを入れた。
「スプーンとカップも欲しいんだけど」
「あっ忘れた。向こうにもあると思うけど、形が違うからな、誰か―持ってきて」
「歯ブラシと歯磨き粉も欲しいんだけど」
「おーい、みんなあー、歯ブラシと歯磨き粉はあるか、使ってないやつが良いんだ」と次郎が叫んだ。さっきの女性が走った。
「他に何かあるかな」
「寝袋は必要かな」
「いや、暖かいから大丈夫だ」
「あの~、風呂には入れるかな」
「残念がら風呂はない。シャワーで我慢してくれ。まあ湖がいっぱいあるから、泳いだらいいと思う」
「わかった」
「それじゃあ、行くか」
「どこら辺に行くかぐらい教えてよ。地図あるんだよね」
「そうだ。地図だ。スマートフォンは使えない」と言って、次郎はとなりの部屋に急いだ。
なんだか心配になってきた。どこへ行くのか分からない所へ、一瞬で飛ばされるのに、地図もないのか。ボーっとしていると、そこにいる五人もボーとしている。次郎が戻った。
「これで勘弁してくれ」と渡されたのは手書きの地図だった。
「これ、正しいの」
「大丈夫だ、記憶力だけは水球でも千人に入る」
「でも、絵は下手だね」
「う~ん、それを言われると、正直落ち込むわ」
「じゃあ行くか」
「いくところは、町はずれで、一軒の空き家の中だ。そこに、必要なものがあるかもしれない。俺たち全員の未来がかかっている。お願いします。山田太郎さん」と、次郎が頭を下げる。ドアのそばにいる新次郎も頭を下げる。そこにいる全員の頭が見える。
「やれるだけのことはしてきます。でも、ちょっと質問して良いですか。私はどうやって帰ってくるんですか」
「我々が利用してきた入口があります。そこに入れば、ここに戻れます」
「出口はあるんですよね」
「心配しないでください。太郎さんが戻るころには、なんとか作っておきますから」
「帰って来られるんですよね」
「大丈夫、帰れる。俺と次郎が保証するよ」と新次郎が言った。
俺は頷いた。

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27.2019/09/27 [笑う小説]

27.それから、色々聞いてみた。なんのために行くかと言えば、ウイルスを撲滅させるために、その先発として俺を一人だけで行かせると言う事だ。
なぜ、俺一人なのかと言えば、地球人の俺は、そのウイルスに感染してもなんの影響も受けないと言う。あの1階に閉じ込められていた男はウイルスに感染していた。
あいつと俺がぶつかった時に、ウイルスが俺の中に侵入したという事らしい。
 あいつがウイルスに感染しているのは周知のことで、彼からウイルスを取り出しすぐに研究が始まり、ウイルスを殺す薬を開発した。驚く事に、その技術は、日本の医術を利用したものだという。彼らには、驚く事に医術が無かったという事だ。ウイルスに出会うまで、病気にかかったことがなかったのだ。
要するに、薬の方もウイルスに免疫力のある、あの男の体を利用したのだ。
翌日、彼らの研究所に車を飛ばした。二時間ほどかかった。林の中にあり、門の脇に山田医療研究所の看板があった。屋根も壁も白で統一された建物で、それほど大きく見えない。車が門扉に近づくと左右に開いた。車から降りると十人ほどの白衣を着た人々が出て来て、頭を下げた。次郎も新次郎もいる。俺を先頭にして建物の中に入る。
「よろしくお願いします」と次郎と新次郎がハモリながら言った。
「もしかして、今日するの」
「ええ、そのつもりでしたが、何かまずい事でもありますか」と新次郎。
「だって、聞いていないよ」
「早い方がいいですよ。まさか、その体のまま向こうに行くつもりですか」と次郎。
「そうだよね。早くやらないと、早く行けないからね。いつごろ行くのかな」
「我々の予定では、若くなったらそのまますぐ行ってもらうつもりです」と次郎。
「そんなに急ぐの、体の方は大丈夫かな」
「若くなるんですから。問題ありません」と次郎。
「じゃあ、よろしく」
「はい、こちらこそお願いします」
 というわけで、俺は丸裸にされて、長いベルトの上に寝かされた。ベルトは洞窟の中に入っていく。眩しい光が照射され、俺は目を閉じる。目を閉じ続けたまま移動している。次に身体中に板のようなものが貼り付き、沢山の小さなとげが出て来て、チクリとした。俺は眠った。
俺は目覚めた。どういう訳か、あそこも目覚めて、寝ている俺を無視して直立している。それを、みんなが不思議そうに見ている。あんまり元気なんで、自慢したくなって、微笑んでしまった。
[おめでとうございます。二十才の気分はどうですか」と次郎に言われた。
「起きていい」というと同時に、下の方がしぼんでいく。恥ずかしい気持ちになる。
「どうぞ、すぐ着代えてください」と、俺のあれを見ていた若い女性が言って目の前に俺が着る服を載せたカートを運んできた。あきれた服だ。左右に二つの服を長いチャックで繋げているのだ。下着はないらしい。人間の生理に会ってないようだ。俺はそんなに毛深くないから着れるかもしれないが、毛深い奴にこんなものを着せたら大変なことになる。この宇宙人は、頭は良いかもしれないが、同時に馬鹿でもある。

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26.2019/09/26 語田早雲です。 [笑う小説]

26.俺たちは結婚した。吉川良子は原田良子になった。新婚旅行はいかなかった。結婚する前に二度ほど旅行したのだから。
そして、二人の生活が始まった。彼女は仕事をしないことにした。その代わり庭が広いので、園芸を始めた。
俺は結婚したので、普通の社長のように会社通いをした。暇なので、毎日勉強をしている。政治、経済、科学なんでも勉強した。パソコンも始めた。生まれてくる子供に何も教えられない父親になりたくないからだ。
俺の会社は、大きくはならなかった。彼らは、彼らだけの会社を作っている。もちろん人間達とのやり取りもしている。そうしないと収入が得られない。が、何か別の事をやっている。俺は彼らの会社を一時期、良く見に行っていた。誰もが俺を見ると、深々と礼をする。どこでも見ることができた。でも、俺にはさっぱり分からないので、今は行っていない。
そうやって月日が経っていった。良子は二人の女の子を産んだ。子供たちの成長を見ていると月日の経つのが速く見える。
二人は結婚し、この家には住んでいない。良子も死んでしまった。会社にはすでに行っていない。毎日、良子の残した花達の手入れをして、日々を過ごしている。そんなある日、二人がやってきた。俺は玄関から出て二人を迎えた。久しぶりの顔だ。
「どうもお久しぶりです」と、次郎が言う。その横で、新次郎が微笑む。どう見ても人間の微笑みだ。多くの人間達と月日を共にしているうちに、身についてきたようだ。部屋に案内した。
「二人とも、若いね。人間の年で数えると幾つになるんだい」
「二人とも、同じ年だから、80歳くらいだね」と、新次郎。隣で次郎が頷く。
「うん、二人とも俺より年上だ。悔しいな」
「それじゃあ、若返れば良いじゃないですか」と、次郎。
「ああ、知っている。あの5年の家だろう。誰がやっているか知らないが、君たちの仲間だろう」
「ええ、5年若返るで知られていますけど、本当はいくらでも若がえられるんですよ。でも、これが知られると大変なことになります」
「そうだね、世界中が大騒ぎになるだろうし、大勢の人が押し寄せてくるかもしれないね」
「でも、太郎さんは特別です。我々の恩人なのですから、若返って長生きしてくもらわないと。万が一、あなたがなくなったりしたら、我々全員が悲しみます」
「ありがとう、そこまで言ってくれたら、やってもらいます。俺だって若返りたい、若い彼女が欲しい。でもこの家に住めなくならないかな」
「大丈夫、若返ったら。息子になればいいだけですから」
「そうだね。君らはなんでもできるから」
「よし、決まった。では、こちらもお願いがあります」
「なんだね。僕のできる事なら何でもするよ」
「そうですか、それでは若返ったら直ぐに我々の星に移動してください」
「えっ、なんだって、星に移動するって、なにを言っていんだ。俺にできるわけがないだろう。ロケットなんか乗れ………、まさか俺の腹から逆に移動するのか、いや、そんなこと出来るはずもない」
「まあ、太郎さんの腹の上の穴は出口専用ですから、入れません」と、新次郎。「実は、入口はできていますし、出口もすでに着いています」
「出口って、やはり誰かの腹の上なの」
「そうです。彼に行ってもらいました」
「彼って、もしかして、あの彼か」
「ええ、会社の1階に眠っていた彼です。彼が行ってからすでに十年は経っていますね」

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25.2019/09/25 語田早雲です。 [笑う小説]

25.その日は楽しく過ごした。夕食は外で食べて、その後、家まで車で送った。彼女はアパートに住んでいる。寄っていくと言ってくれたけど、遠慮した。でも五日後に会う約束は取った。彼女は大学を出て半年もたっているが、仕事をしていない。理由は聞かない。帰り道の途中で、スマートホンにが鳴った。初めてだ。車を脇に止めた。次郎だ。いや川田部長だ。
「驚いたか」
「驚いたよ、勝手に出てくるなんて約束が違うよ」
「すまない。あいつは俺たちの仲間になりたがっているんだが、俺たちは絶対認めない」
「なぜ」
「あいつこそ、ウイルスを広めた本人なんだ。俺たちの文明を破壊した男だ」
「そんな奴がまだ生きているのか。地球上だったらすでに誰かに殺されているよ」
「ああ、俺たちは殺せないんだ。でも、死ぬ権利は与えられる」
「どうやって」
「でもこの星の上では、与えられない」
「じゃあ、死ぬまで待つしかない」
「今のところは、そんな所だ」
「で、あいつをどうするんだ」
「会社の1階のあの部屋に、あいつ用の入れ物がある。そこに入れた」
「死んだらどうするんだ。悪臭が」
「大丈夫だ、直ぐには死なない、俺たちは何もしなくても10年くらいは生きている」
「わかった。でも、もうないんだろう」
「それは大丈夫だ、補償する」
「わかった」
「じゃあ失礼する」
 車を飛ばして、一人住まいの大きな家に向かった。
 翌朝は、当然会社に向かった。することがないので、いつの間にか俺なりの勉強をしていた。会社についての本やら株、不動産、などの本だ。でも、全然夢中になれない。それでも、大まかなことは分かったので、一ヶ月ほどでやめた。その間も、かなりの数の宇宙人をこの社長室で、出してきた。その度に、会社が大きくなる。と言っても、仕事の種類が増えていくので、この本社ビルは大きくならない。
彼らも、この日本に住んでいる、移民みたいなものだ。しかし、彼らの団結は違う。彼らが作る工場の種類が多い。何か特別なものを作っているかもしれない。でも、地球征服を考えているはずはない。
そして、新次郎を出してから一年が過ぎた。もう、262人も出した。子供たちも69人ほど出した。その彼らは、保育園と幼稚園とが一緒になった、彼らだけの施設に住んでいる。何度か訪れた、でもあまり楽しくない。子供たち全員が、俺に挨拶してくれるけれど、子供たちが静かすぎる。人間とは違うのだ。
何時ものようにそれは始まったが、今日で最後だと川田部長が言った。俺は大きめの低いテーブルの上で横になった。100人を過ぎたころから、これに代えた。
「いくぞ」と次郎。
「おう」と、意味もない新次郎のいつもの返事。もうこれで聞くこともない最後の言葉。
「でった。一人目だ」
「おう」
「つぎだ」
「おっ」
「つぎだ」
「三人目だ」
「つぎだ」
「お終い」
出てきたのは、三人の子供たちと、一人の女性だ。子供たちの年齢はばらばらだ。女の子の赤ん坊と少年とちょっと年上の背の高い少女、そして初めて見る宇宙人の老婆だった。
子供たちの嬉しそうな感謝の言葉。
そして最後に老婆は俺の手を取って、「お疲れさまでした。私たちみんなは、心から貴方に感謝しています。命の恩人です」と言った。涙が出ていた、宇宙人の涙を初めて見た。堰を切ったかのように次郎も、新次郎も涙を流していた。子供たちもつられて泣いている。廊下の外からも涙声が聞こえている。俺も涙があふれて止まらなかった。

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24.2019/09/24 [笑う小説]

24.彼女を待っている。ちょっと早めに着いた、車を駐車場に置き、駅舎の待合で待っている。彼女の乗っている電車がもうすぐ着く。改札口の前に行くと、直ぐに彼女が来た。
車の中で彼女の生い立ちを聞いた。小学生だった時の話が面白かった。ますます、好きになってしまう。
俺の話もしたが、どういう訳か失敗の話ばかりになってしまった。彼女を笑わせたかったのかもしれない。笑い声も良い、ますます好きになる。家に着いた。ガレージはまだない。
「素敵な家ね。でも若い人の家には見えないわ」と玄関の前で彼女が言った。
俺も頷いた。俺って何も考えていないと思った。
「まあ、綺麗にしたけどもともと古い家だから」
「そうよね。でも、古い家を若い人が持っているって素敵じゃない」
「ありがとう。家の中を案内するよ」ドアを開け、彼女を先に導いた。
「大きな家ね」
「うん、一人には大きすぎるかもしれない。コーヒーでも飲むかい」
「はい、私コーヒー派よ」
「俺もだ。気が合うね」
「そうよね、飲み物と食事は気が合った方がいいわよ」
「そうだね。全然違ったら面倒だろうね。じゃあ、その椅子に座って待っていてくれる」
昨日準備しておいたコーヒーをフィルターに入れて、お湯を注いだ。
「お待たせしました」
「ありがとう」
「そう言えば、ビスケットもないね」
「いいわよ」
「冷蔵庫はあるけどコーヒーしか入っていないんだ」
「じゃあ、二人して買いものでも行きましょう」
「おう、行こう。その前にスーパーの場所も知らないから、スマホで調べる」
「コーヒーどう」
「美味しくって、もうなくなってしまったわ」
「俺も飲んでしまった。もう一杯飲む」
「いえいいわ、おトイレどこかしら」
「案内する」と言って俺は立ち上った。
 彼女が着いて来る。部屋に戻って、コーヒーカップをキッチンまで運んだ。
トレイから流しにコーヒーカップを置こうとしたら、腹に穴があき何かが飛び出てきた。そいつは思いっきり前にある流し台の角に頭をぶっつける。俺は逆に後ろにはじき返され冷蔵庫に思いっきり頭をぶっつける。
「ウ~ン、頭がいてえ」
「ウ~ン、おれもだ」と、俺の前に立ちあがる裸の男が言った。なには俺より小さい。
「やっぱり来たか」と、声が上がった。見ると次郎だ。後に新次郎もいる。
「お前らか、とうとう見つけたぞ」と、その裸男が言った。
「見つけたは良いが、お前は俺たち全員が管理する、いいな」と、次郎が言った。
「どうせどこに行っても見つけられてしまうんだ」
「よし」と、新次郎が言って男の腕を捕まえた。男はなされるままだ。抵抗はしない。次郎もその男の腕を捕まえる。男は両側から犯罪者のように捕まえられている。
「キャー、その人裸よ」
「大丈夫ですよ、私たちが捕まえましたから」と、刑事にでもなったようなセリフを新次郎が言った。三人はキッチンを出ていく。足下を見ると新次郎と次郎は二人とも土足だ。靴ぐらい脱いでほしかった。
「大丈夫」と、後頭部を指すっている俺を見つめる。その心配そうに俺を見つめる顔を見ていたら、俺は恋に落ちたと確信した。

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23.2019/09/20  語田早雲です。 [笑う小説]

23.11時50分に、俺は外に出た。彼女を外で迎えるためだ。すると直ぐ、左側から来る歩道の上の彼女が見えた。俺は手を振った。彼女も答えた。
ビルの前まで着た彼女に、「ありがとう」と言った。彼女は頬笑みで答えてくれた。ドアを開けて、彼女を導くと、奥から来る社員が、俺達に深々とお辞儀をした。このお辞儀が社長に対する礼儀か、それとも俺の腹に対する感謝か、俺は分からない。俺も軽く頭を下げた。
エレベーターに彼女を乗せた。
「嘘じゃなかったわ。貴方ってもしかしたら凄い人なの」
「いや、だめな男だよ」
「うそよ」
エレベーターのドアが開き、彼女を社長室に導いた。ドアに社長室とアクリル板の小札がはってある。ドアを開け彼女を導く。ソワアに座って向かい合わせになる。
「食事に行く」
「でも、今の時間はどこも込むんじゃない」
「そうだね。俺正直言うとさ、高級なレストランとか行った事がないんだ。いつも小さな食堂で、昼は澄ましているんだ。かまわないかい」
「いいわよ、私もそうだから」
「なんか俺たち、気が合いそうだね」
ドアが開いた。今日俺の腹の上に出てきた女性が、入ってきた。手にトレイがある。もちろん、茶托の上に湯飲み茶わんがのっている。
「失礼します。お茶をお持ちいたしました」
「ありがとう」と俺は答えた。と、同時に驚いてしまった。こんな事まで、伝わっている。
俺と彼女の前に湯飲み茶碗」を置いてから、彼女は深々とお辞儀をし、ドアの前で、もう一度お辞儀をして静かに出て言った。
「素敵な方ね」
「う、うん」
「この会社って、なにをする会社なの」
「株と不動産と建築だよ、建築はまだ準備段階だけどね」
「あなたって、もしかしたらこの会社のオーナーでしょう」
「まあ、そんな所かな。ほとんど何もしていないからね」
「その若さで、会社を持っているなんて、すごい。お嫁さんにしてもらうかな」
「うれしいな~、でもね。俺も結婚したいけど、後一年くらいはしてはいけないと思っているんだ」
「なぜなの」
「う~ん、それはちょっと言えないな」
俺の計算では、後一年くらいで、300人くらいになる。そうすればもう出さなくて良いんだ。腹から人間、いや宇宙人なんか出してる時に、女性と一緒になんかなれるわけがない。
「じゃあ、待ってるわ」
「君ってすごいな」
「普通の女の子はそんなこと言わないよね」
「だって、あなたを初めて見た時に、何か感じたの、それに会社のオーナーよ。でも、一年くらいお付き合いしてから決めた方がいいわね」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「ちょうど、いい時間になった。食事に行こう。なにが好き」
「なんでも好き」
「よし、行こう」
というわけで、彼女とのお付き合いが始まった。良く考えると。おかしな話だが、俺は雇われオーナーでもある。オーナーで雇われている奴なんているんだろうか。良く分からんが、彼女に嘘をついてはいないはずだ。
三週間ほどたって、運転免許所をもらってすぐ、俺の車であの家に移動した。それまでに改装は済んでいた。新築とは言えないが、趣のある高級な雰囲気がある家になった。たぶんそうだろう。
アパートに有った物はほとんど処分した。安物ばかりだ。明日、彼女をこの家絵に招待する。今日は料理の練習をする、上手いものを食って楽しく過ごすのだ。

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22.2019/09/19 語田早雲です。 [笑う小説]

22.社長室に入ると、すでに準備は整っていた。と言っても俺が寝る床にマットが引かれているだけだ。枕とウルトラマンのマスクが並んでいる。いまはウルトラとマットと枕は担当が管理している。俺は寝るだけだ。でもすごい事をしているんだ。人間を、いや宇宙人を腹から出している。こんな奴は、どんなに宇宙が広くても俺ぐらいだ。と言いたいけれど、誰にも言えない。
川田部長がノックもせずに部屋に入ってきた。
「ノックは」
「あっ、すみません」
俺は、彼の目を見た。次郎も微笑んだ。俺もつられて微笑んだ。
ドアが閉まって直ぐ、ノックの音がした。新次郎の顔が扉の隙間から出てきた。「おはよう」と新次郎。
「おはよう」俺と次郎の声がハモッタ。宇宙人のと人間のハモリだ。
「今日はどうしたの」と俺が聞いた。
「3人も来るから手伝いだ。麗も今来る」と新次郎が言い終わると、ドアが開いた。
「持って来たわよ。三人分」服だ。男一人分の服と女性二人分だ。普通のサラリーマンとサラリーウーマンの服だ。
「おはよう」三人の声がハモッタ。
「遅くなりました」麗はおはようは言わないらしい。
久しぶりに4人がそろった。
「じゃあ、社長そのマットに横になってください」と、次郎。
「はい」これで何回目だっと、思いながら横になり、ウルトラの父に、いや母になるんだ。
「いくぞ」の掛け声を次郎が言った。
「おう、一人目が出てきたぞ」と新次郎。
「うまいね、着地が」と、次郎。
「う~ん,俺も見たい」と、俺。
「だめよ」と、麗。
というわけで、どうにか3人が出てきた。
俺は、いつものようにウルトラマンのマスクをしながら、椅子に座る。慣れたものだ。次郎の合図でマスクを剥ぐ。
服を着終えた三人が、俺に深々と頭を下げて、「お世話になります」と言った。
どう言う訳か、後から来たものほど、どんどん人間らしいあいさつになっていく。みんな伝わっているんだ。
あの1階の部屋は、実は幾つもの小さい小部屋になっていて、一人で入る。そして、上下四方をなまりに包まれた壁が遮断するのだ、他の者との繋がりを。 
そして、自分というものを取り戻すのだ。他の者と繋がり過ぎて、自分を見失った者達が。このことを新次郎から初めて聞いたとき、なにも感じなかった。けれど、こうやって色々な宇宙人と出会うと、そんな事をする気持もなんとなく分かってきた。

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21.2019/09/18 語田早雲です。 [笑う小説]

21.帰りの車の中で、ふり返って麗を見るとポカ~ンとした顔をしていた・だまされたとも思っていないだろうが、訳が分からんという顔だ。顔が見えないが、新次郎もそうだろう。三人は黙ったままだ。きっと訳が分からないのだ。俺も訳が分からん。
翌日は休みだったので、パチンコに行った。相変わらず三人がやっている。仕事が好きなんだ。これから来る仲間たちのために頑張っているんだ。
新次郎の後に立った。パチンコをやめて俺の方を振り返った。
「今日も出ているね」昨日の事など忘れているかをだ。
「うん、出している。でも彼にはかなわん」
「あの天才か」
「ああ、でもあいつとは通じないところもあるんだ」
「へー、いろんな奴がいるんだね」
「すわるか」
「うん、でも俺が選んでやりたいんだけどいいかな」
「良いよ。なんたって社長だ」
「ふん、じゃあ」ということで、出そうな台を探して、適当な台の前に座った。
しばらくしたら、出るようになった。こう言うのは気分が良い。また、くせになりそうだ。と思っていたら最後には全部なくなってしまった。カッコ悪いので、先に帰った。ちょっと、彼らに悪いような気持にもなった。
翌日から教習所に通った。運転免許も取らないといけない。次郎に話したら、取ってやると言ってくれたが、こう言うのはまともにやらないとまずい。
三日目に可愛い子に話しかけられた。タイプだ。大丈夫、地球人だ。
帰り際に誘った。バスに乗った。行先は同じだ。途中で降りて、早い夕食をした。「お仕事は何ですか」と聞かれた。
社長をやっていますとは言えない。信じてもらえるわけがない。
「トキドキ会社に通っているよ」
「そんな仕事があるんですか」
「うん、好きな時に行く」
「う~ん、そこまで言うと嘘にしか思えないけど。嘘をついている顔じゃないわ」
「ありがとう。誰も信じないよね。俺だって、社長になってくれと言われたときはびっくりしたよ」言ってしまった。
「凄いと言うしかないわ、じゃあ私その会社に行って良い」
「良いよ、でもみんな変わり者だけど、気にしないでね」
「教習所の休みの日が良いね」
ということで、三日後の木曜日にくることになった。
翌日会社に行くと、「二日後にお願いしますと言われた」と次郎に言われた。
「う~ンまずいね。俺のお客さんが来る日だ」
「何時ごろですか」
「お昼ちょっと前に来て、一緒に食事をして、それから一緒に出かける」
「じゃあ、午前中にしましょう。朝一でやりましょう。三人も来るんですから」
「多いね」
「ええ、建設部をつくるものですから」
「へえー」俺は会社のことを何も知らない、これってやっぱおかしい。これからの予定ぐらい前もって教えてもらわないと、俺は社長だ。次郎、いや川田部長に言ってやる。
「じゃあ、おれも早く来るよ」
「お願いします」
 そして、その日が来た。毎日歩いて通う路だ。今日は足運びが速い。9時前についた。俺の前に見覚えの後姿があった。そいつはドア名前に立つと、俺に気づいて、「おはようございます」と言って、脇によけ腰を曲げたお辞儀をした。
「おはよう」と答えた。これを見た外を走るクルマの中の人々は、どこにでもある会社の朝の一コマだと思うはずだ。従業員が全員宇宙人だなんて気がつくはずがない。俺も、これからすること以外は、彼らを人間だと思ってしまう。俺は騙されているのだろうか、いや違うこの中にいる全員が良い奴ばかりだ。俺は信じる。


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20.2019/09/17   語田早雲です。 [笑う小説]

20.翌日鈴木一郎君の運転で、朝から幽霊が出ると言う家に行った。朝であれば幽霊も出ないはずだ。早起きの幽霊なんて聞いた事ない。
実は、前日に鈴木君に運転を依頼した時に、行きたくないようなそぶりをしていたので、朝には幽霊は出ないと言ったら、運転してくれることになった。
彼らは、見えないものがどうやら怖いらしい、俺の考えでは見えないものは存在しない。まあ、重力とか自然の法則は見えないけど、影響を与えるものは存在している。俺はそういう人間だ。現実的なんだ。
家の前に車が止まった。洋風の家だ。昔風の作りでかなり古い。住んでいた老夫婦は都合で引っ越している。庭も広い、草がぼうぼうと生えているし、大木も生えている。
鈴木が木製のドアを開けた。鈴木の後をついて行く。何の説明もしないで、次々とドアを開けていく。中は綺麗だ。ほこりも被っていない。洋風の広間と、寝室が4部屋にキッチンに食堂もある。和室も2部屋ある。2階は屋根の勾配が急傾斜で2部屋しかないが、傾斜した屋根の下が物置部屋になっている。
1階に降りた。
「幽霊はどの部屋にいるんですか」
「いや、まだ分からない」と正直に言ってしまって「が、何かを感じる」と、ごまかした。いないとは言えない。
「感じる部屋は、どの部屋ですか」
「う~ん、2階に何かを感じる。いるとしたら物置部屋あたりだろう」と、言ってしまった。でも、あそこにはいらなくなったガラクタがあり、蜘蛛の巣もはっている。我ながら言い答えだ。
「あのう、あしたも来ないといけないですか」
「代わりに誰か来てくれれば、誰でもいいよ」
「う~ん、誰も来てくれません」
「わかるの」
「ええ、わかります」
「じゃあ、除霊している間、外で待っていればいいよ」
そして、会社に向かった。途中で車を何度か止まらせ、明日に必要なものを買ってきた。
翌日午後三時ごろ、社長室で除霊に必要な物をチェックしていると、麗と新次郎が部屋に入ってきた。
「失礼します」
「どういたしまして、あれ新次郎も来たの」
「一人じゃ怖いって麗が言いだしたものですから」
「こんなこと聞いていいのかどうか分からないけど、怖さって伝わるの。君たち二人が、あの家で恐ろしさにパニックになったら、みんなに伝わるの」と、言ってしまった。二人とも怖くなったのか、震えているように見えた。
やり過ぎてしまったかもしれない。後でばれたら嫌われる。
「行きますか」
二人の後ろから、顔を突き出して鈴木君が言った。その顔を見る限り、恐怖は伝わらないようだ。
「ちょっと早いような気もするが、行くか。二人ともどうする。来てもこなくてもどちらでも、お好きなように」俺はもちろん来ない方を期待した。除霊ごっこはしたくない。
「わたし、行くわ」と麗が答えた。新次郎が頷いた。
「じゃあ、お願いします」と言って、俺はバックを掴んだ。もちろん無駄に大きい黒いバックだ。ピンク色じゃまずい、そのくらいは分かる。
鈴木君は素早く階段に向かい足音を立てながら降りて行った。俺たち三人はエエレベーターに向かった。三階建てのエレベーターなのにやけに大きい。まあ、広々として気持ちいが。
入口の自動ドアが開くと歩道の前に車が止まった。車から降りてきた鈴木君が黒いバックを持とうとしたが断った。俺は前の座席に座り、二人を後ろの席に座らせた。俺はバックを貴重品を扱うような仕草で抱えた。中には、榊(さかき)と酒一升壜(びん)と塩の袋だけだ。白装束や鉢巻きも考えたが、あまり凝ると怪しくなる。まあ、宇宙人がどう見るか分からない。
車は庭の中央まで進んだ。家の外まで除霊するつもりはない。だってくたびれる。鈴木を先頭に家に入ったが、俺が直ぐ先頭になり、和室に向かった。宇宙人は正座をしていない。苦手なはずだ。これも計画に入っていた。仏壇がないので、何もない床の間の真ん中に大きめの白い皿を置き塩で山をつくり、真ん中にろうそくを立てた。こんな蝋燭の建て方を初めて見た。
鈴木がしなくても良いのに電気を付けてから部屋を出て言った。俺は蝋燭(ろうそく)に灯をともし、呪文を言った。もちろん小声だ。なにを言っているか聞こえないようにするためだ。彼らは直ぐ覚えるから、大声でだと、後で調べられる。
声を出している本人がなにを言っているか分からないものを、覚えられる奴はいない。
黒バックから、大きめの榊を取り出した。それで、蝋燭の火に向かって榊を二三度ほど振った。
それから、体を回して厳粛(げんしゅく)な顔で、「頭を下げなさい」と二人に向かって言った。麗が最初だ、彼女の頭の上に軽く榊をのせ、すぐに上げてから左右にバサバサと音を立てながら振った。もちろん新次郎にも同じことをした。
そして、ろうそくの灯を消して、立ち上がり、「ついて来なさい」と言った。もちろん今度は、顔も見ない。ふすまを開け廊下を歩き階段を上り、物置部屋に向かった。鍵の掛かっていないドアを開けた。裸電球に光がともっていたが、薄暗かった。
「ここで除霊の儀を行う。両手を合わせて目を瞑りなさい」と大声で言ったが、なにをどうするか考えて来なかった。
まず、即製の小声の呪文を唱えながら榊を先ほどより激しく振った。時々呪文にどなり声も入れる。最後に、「タイサン、タイサン、タイサン」と大声を叫びながら、ポケットから取り出した拍子木でパチンパチンと音を鳴らし、素早くポケットに戻した。
「終わりました。目を開けてください」
「幽霊はいたんですか」
「ええ、いました。でももう出てきません」
「見たんですか」
「ええ、見ました」
「怖いんですか」
「とんでもありません、かなりぼやけていましたから。もうすぐ成仏するんじゃないですか、穏やかな様子でした」
「それは良かった」
「じゃあ帰りましょ」
「はい」

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19.2019/09/13 [笑う小説]

19.車を持つと言う事は、今のアパートでは無理だ。駐車場を借りればいいのだけれど、アパートから遠い。それに空いている駐車場を探すのが大変だ。
やはり、吉本に相談しよう。吉本というのは、あの夫婦で出てきたあの時の中年風の男だ。本当に中年だかどうだかわからない。中年夫婦にしては肌が若々しい。それにどっちも同じ肌に見えた。
その吉本が、後から来たのに不動産部門の部長になった。まあ、肩書だけだ。でも俺よりは仕事をしている。
というわけで、雨の中を、傘をさして向かった。髪は相変わらずぼさぼさだけど、背広を着ている。足下が濡れる。
会社についた。2階のドアを開けて、俺が言おうとすると、後ろから「おはようございます」と言われ、俺も「おはよう」と返した。社長らしくしないといけない。そいつは、俺の前にもぐりこみ部屋に入って言った。次郎、いや川田部長に言ってやろう。この会社の宇宙人は常識を勉強しないとだめだ。俺が教えてやる。
部屋に入ると、三人しかいない。三階より少ない。二人がそろって挨拶した。俺も返した。
「なにかありますか」と吉本。
「実は、今のアパートを出て、車で通えるところに、引っ越そうと思っているんだ」
「どんな家が良いですか」
「まあ、今よりは広い家が欲しいね」
「という事は、一戸建ての住宅ですか」
「いやぁ、まだ一人者だしそこまで、広くなくても良いんだ」
「まあ、そんなこと言わずに。いい物件があるんですよ。会社で買った物件です。社長らしい家になりますよ」
「家賃は高いんだろうね」
「いえ売り物です。そうだ、社長に買ってもらいましょう」
「だって。俺そんな金持っていないよ」
「いや、毎月払ってもらいます」
「いくらぐらい払うの」
「百万ぐらいですね」
「ちょっと待ってくれよ、俺の給料はその半分だよ。払えるわけがないだろう」
「いえ、大丈夫ですよ。その分の給料も増やしますから」
「百万もだすの」
「ええ、川田部長が、そろそろ社長の給料を上げましょう、と言っていました」
「それだけで、百万も上げちゃうの」
「いやあ、こちらも頼みたいことがありまして」
「なに」
「いやぁ、その一戸建てなんですが、幽霊が出るって噂があるらしいんですけど、三階の鈴木が一晩起きて待っていましたが、出てこないんですよね」
「う~ん、あの鈴木一郎さんですね」
「ええ」
「それで、鈴木君の前に、幽霊が出たんですか」と、太郎は微笑みながら言った。
「我々には見えないのかもしれません。みんなに聞いてみたんですが、誰も見たことがないんです」
「あの~それで僕に頼みたいってことは何ですか」
「実はその幽霊を退治してもらって、あの家から出してもらいたいんです。私たちには見えないものが、地球人のあなたなら見えるでしょう」
「任しといてください。追い出しますよ」
「よろしくお願いします」
と、言うわけで三日後の晩は幽霊退治になった。新次郎と次郎それに麗を誘ったら、麗だけが来ることになった。二人は怖いと言った。宇宙人の男のくせにだらしない。

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18.2019/09/12 語田早雲です。 [笑う小説]

18.もちろん、パチンコをやっている。二人とは挨拶したが、もう一人の奴とは挨拶しない。代わりものなのだ。宇宙人にも変わり者がいるんだ。話をしない、というより地球人の音声に合わせられないって話だ。
無理して出すと、とてつもない高音で、俺たちの鼓膜を破るかもしれないから、一言も話さない事にしているって事だ。
ただにやけた顔だから、人に嫌われそうもない。
でも、こいつはすごい。本当のパチプロだ。新次郎の上を言っている。出る台が分かるなんてものじゃない。でない台でも出してしまう能力がある。
まあ、パチンコ屋にとっては迷惑な客だ。
でも、俺は最近やる気がなくなった。なんかつまらないのだ。最初のころはみんなのために頑張ろうと、どうにかやっていたが、確実に勝つパチンコって面白くない。それに、次郎と他の仲間たちが株で稼いでいる金額を知ると、パチンコのもうけが少なくて、なんかさみしい。
というわけで、会社に通う回数が増えてきた。でも、ここでみんなのしている事を見ても、さっぱり分からない、そんなわけで、社長室に閉じこもり、勉強を始めた。株の勉強をまた始めたが、直ぐ止めた。なにがなんだか分からないのだ。不動産の本はどうにか読める。だいたい内容も分かった。
相変わらず、彼らの仲間もお腹の上で出している。最近は周三回から四回ほどだ。このビルも最初は三階しか開いていなかったが一二階も開いた。二回は不動産を扱っている。外来者が決まっているので、一階に設けると部外者が入ってくるので、二階にある。一階は小さな会議室と彼ら専用の部屋がある。入り口と出口は鉄扉だ。倉庫という表札があるが、毎日彼らの仲間がやってきて入っている、月一ぐらいの割合で入っている。新次郎に聞いたら、地球人に変身し続ける事にいらだちを感じるって話だ、あの部屋の地球で言えばサウナみたいなものの中で、本当の自分に戻って、仲間達と休んでいると言う事だ。
それで、わかった。会社にくる彼らの様子は寂しいような悲しいのような様子だが、帰るときは生き生きとしているように見える。
このビルの後ろ側には駐車場がある。車で通って来る者がいるからだ。みんな安全運転しかしない。万一事故になって怪我をしたら、地球人ではないとばれる。車の中に閉じ込められると、大変だ。そんな時のために自爆する物も車の中に置いてあると、新次郎が言った。別の惑星の別の文明の中で少数の異星の者が生きていくことがどれほど大変なことか分かると、彼らにできるだけの事をしたいと思う。
だけど、彼らの運転する車には絶対に乗らない。俺も車を買って運転しよう、でもあのアパートじゃだめだ。
毎月の給料もかなりもらっている。何もしてないから悪いと思っていたが、いや違う。あいつらの腹出し料なんだ。ちょっと安いかもしれない。今度、次郎に相談だ。一人いくらぐらいが相場なんだ。う~ん相場はないな。


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17.2019/09/11 語田早雲です。 [笑う小説]

17.そんなわけで、いつものようにパチンコをしている。それでも週一で会社に行く。次郎に挨拶してから、社長室に入る。次郎もついて来る。そこでなにをするかと言えば、あれだ。彼らの仲間を、腹から出すんだ。次郎と俺だけしかいない。相変わらず、目のふさがったウルトラマンのマスクを被る。従業員を増やすんだ。
「いくぞ」と次郎。今日は二人だ、続けるぞ。
「おう」と、俺。
「出た―、男だ。次が続いた女だ―」
 俺は起上る。もちろんウルトラマンを付けたままだ。横においてある、椅子に座る。たしか、今日で五回目だ。従業員が8人増えた。彼らも、次郎と一緒に株をやるんだろうか、いや不動産もやるはずだ。仲間たちの住まいを確保しなければならないんだ。
「ウルトラは外していいよ」
「おう」
マスクを外すと、俺の前に四十過ぎのおじさんと、同じ年ごろの女性がいる。もちろん二人ともそれなりの年に見える服を着ている。
「お世話になりました。今後ともよろしくお願いします」
俺は立ち上って、頭を下げた。
「ことらこそよろしくお願いします。地球人とのお付き合い方法なら、あなた方よりは分かっていますので、何でも聞いてください。次郎さんも新次郎さんも、経験豊富で色々なことを知っていますが、地球人としては可笑しなこともあります。ここには週一ぐらいできますんで、連絡ください」
「はい、おお願いします」
「初めてだね。いまの話、俺たち二人ちょっとおかしいかな」
「まあ、二人だけだったら変わり者として通用するかもしれないが、変わり者ばかりになったら、怪しまれるよ」
「それもそうだね。変なところがあったら、ずばずば言ってくれ」
「まあ、俺も変わり者だけどね」
「う~ん、俺たち太郎だけで大丈夫なんだろうか」
「あの、そういう事は本人のいる前で、日本人は言わないよ」
「いや、俺たちって隠しごとができないから、何でもはっきり言うんだよ」
「そんな言い訳はできない。ここは地球だ」
「うん、分かった」
出てきたばかりの二人は、ただ茫然と俺たちのやり取りを聞いていた。
「あのう、私達これから住まいの方に案内してくれるんですよね」
「じゃあ行きましょう。社長も来る」
「あの、社長も来る、じゃ駄目だ。社長さんも来られますかだ」
「社長さんも来られますか」
「いや、いかないよ」
「はい、分かりました」
というわけで、三人は部屋を出ていった。不動産関係の本を買ったのだけれど、面白くないので本棚に並べたままだ。まさか、社長室で漫画を読む分けにいかない。というわけで、パチンコをすることにした。仲間が一人増えた。そいつも出す。負けたくはないけど、俺の金を稼いでいるわけでもない、けれど止められない、これほど続けてきたのでもはや中毒だ。
そろそろ俺はやめないとだめだ。彼らは中毒になっているんだろうか。俺よりも夢中でやっているんだから、なるような気がするんだけど、宇宙人じゃ分からない。
良く考えてみたら、彼らがどこから来たかも知らないなんて、おかしいよ。俺には知る権利があると思うけど、こんど聞いてみる。
というわけで会社を出て、パチンコ屋に向かった。

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16.2019/09/10

16.あれから、一週間近くたった。俺たち二人はパチンコばかりやっている。麗は、鈴木夫婦のところに二日ごとに行っている。赤ん坊は泣かないから、他のつの家の住人には話していないと言っている。あの家を選んだのは失敗だ。三人とも頭は良いが、しょせん宇宙人だ。人間の常識を知らない。俺が頑張らないとだめだ。
鈴木一郎さんの仕事もない。早く事務所を借りないと。そんな事を思いながら顔を洗っていると、「おはよう」と新次郎の声がした。音を立てないで、部屋に入ってくる。この部屋のドアの癖を覚えている。鍵がなくても開けられるのだ。
「おはよう、今日は早いね」
「事務所を次郎が勝手に決めていたよ。相談なしで決めるなんてまずいよな」
「まあ、そうだけどまだ一回目だから」
「会社名も決まっていて、事務所の家具までみんな入っている」
「驚かせようとしたのかな」
「いや、俺たちは筒抜けだから、隠せないよ」
「じゃあ、新次郎も、俺にも隠していた事になるじゃないか」
「いやあ、太郎が人間だというのを忘れちゃったんだよ」
「う~ん、それ喜んでいいの、それとも怒るべきなの」
「俺に、わかるわけがない。それより、美味しいコーヒーの店があるから、そこで朝食をとってから、事務所まで歩いていこう」
「ちかいの」
「遠くはない」
と、いうわけで、俺たち二人はのんびりと朝食をとり、事務所に向かった。
「次郎は、会社にいるの」
「ああ、昨日から行っている。まだ戻っていない」
「会社ができたんだから、もうパチンコはやらないんだろう」
「いや、仕事としてやればいいんだから、やれるよ」
「でもさ、俺社長をしなきゃならないんだろう。社長がパチンコする訳にいかないよ」
「大丈夫だ俺もやるし、他の従業員もやれば金は稼げるよ」
「次郎が、なにを考えているか、分からないのか」
「それが全然何も考えていないみたいだ」
「それじゃあ、パチンコしかないのか」
「会社借りて、パチンコって訳にいかないよな。もうすぐ会えるから、相談しよう」
「うん」
会社の前についた。3階建のビルの一番上に原田商事という看板がある。
俺の名字だ。という事は、俺を社長にするつもりだ。これは困った、社長ってなにをすればいいんだ。
しかし、これだけのビルを良く借りられたものだ。
良く考えたら、次郎さんは口座を持っている。それも、この会社の口座だろう。株でかなり稼いでいるんだ。
「次郎さんは株で稼いでいるのかな」
「うん、かなり稼いでいるよ。金額までは分からないけど、俺たちのパチンコでは届かないほどの額だ」
「俺にもそういう能力が合ったら良いのに」
「能力と言うほど物もではないと思うな、たぶん、次郎は人間の考えの癖に気が付いているんだよ、まあ、俺は良く分からないが」
「3階だ。入ろう」
「うん」
エレベータで上がった。スチールドアを開けた。次郎さんが、パソコンに夢中で気が付かない。と、思っていたら、「ちょっと待って」と声を掛けられた。たしかにちょっとだった。
「いやあー、社長お待ちしていました」
「やっぱり社長か、看板見てそうじゃないかと思ったんだけど、俺社長なんて出来ないよ」
「とんでもない、太郎さんにピッタリの仕事ですよ」
「俺のような男にピッタリって、なにをすればいいんだ」
「なあに何もしなくて良いんです。毎日、新次郎と一緒に、パチンコでもしていればいいんじゃないですか」
「はあ、それが社長なの」
「この会社は、他の会社とかかわらないで仕事をするんで、どことも
お付き合いしないんです。まあ、それでも向こうから来るかもしれません、その時は会社にいてください」
「俺にできるのかな~」
「大丈夫、誰にも会わせませんから」
「安心はしたんだけど、なんかさみしい」
「じゃあ、パチンコは新次郎と麗に任して、社長室で勉強でもしてください」
「それも良いね。じゃあパチンコもするけど勉強もするわ」
「どうぞ、社長のお好きなように」

ショートショート
「どうです。今すぐコーヒーを沸かしますから、飲みませんか」
「はあ、インスタントはちょっと」
「とんでもない。僕はインスタントなんか飲みませんよ」
「はあ~、でしたら沸かすじゃなくて、入れるんじゃないですか」
「まあ、そういう言い方もありますが、このコーヒーは違いますね」
「何か特別なコーヒーなんですか」
「いえ、違います。三日前に入れたコーヒーです」
「帰ります」

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15.2019/09/09  語田早雲です。 [笑う小説]

15.三日たった。次郎と麗の部屋にいる。朝から呼ばれている。二日前からスマートフォンを持たされた。
「じゃあ、行くか」と次郎が言った。
「行くじゃないよ、出すんだよ」と、下からみんなを見ている俺が言った。
「確かに、出てくるな。行ってはまずい」と、次郎。
「ちょっと待って」と言って、俺はウルトラマンを被った。目のところに、バンドエイドをはった。これしかなかった。女性も出てくるので、遠慮した。まあ、出てくる方は、見られてもちょっとも恥ずかしいとは思はないだろうが、寝ている体の下半身に変化があってはまずい、みんなに見られてしまう。俺が恥ずかしい。
「いくぞ」と、次郎。
「おう」と、何もしないくせに、新次郎が言った。
「一人目が出た」と新次郎。「男よ」と、麗。俺に教えているつもりだ。
「二人目だ―、ウルトラマンを取るんじゃないぞ。女性が裸なんだから」と、新次郎。
そんなこと言われたら、見たくなるじゃないか。ちきしょう。
「三人目よ可愛い赤ちゃん、でもまだ地球人みたいじゃないわね」と、麗。
「ウルトラマンを取っても良いか」と、俺。
「もうちょっと待ってね。二人とも今着ている最中だから」と、麗。
「じゃあ、合図を頼む」
「わかったわ」と、また麗。
かなりたった。寝ている俺の事を忘れたのだろうか。
「起きるぞ」返事がない。
「ウルトラマンも取るど」
「ちょっと、待って下さい」知らない声の返事だ。
「いや、彼なら大丈夫だよ」と、新次郎が言った。
「じゃあ起きる」と俺は起上り、ウルトラマンを取った。
「アッ」思わず声がでてしまった。
 座布団の上に、赤ん坊が寝ている。ピンクのベビー服に包まれて寝ているのだが、どう見ても人の赤ん坊ではない。人間とは違うとすぐわかる、口は大きいし、肌の色が薄いグレーだ。でも、気味悪いとも気持ち悪いとも思わない。逆に、可愛いと思った。人の赤ん坊より大きめの二つの目はくりっとしていて、かなり丸いし、それに比べると丸くて小さい鼻も可愛い。「可愛いね」と、思わず声が出ていた。
「おう、地球人が見ても可愛いか」と新次郎。
「うん可愛い。でも、人に見せられないね」
「そうなんだ」と、次郎。
「初めまして、鈴木一郎です。お世話になりました」と言って、初めて会う男が、頭を下げた。
「こちらこそ、どうも」
「これが、家内の良子です」
「初めまして、お世話になりました。今後ともよろしくお願いします。実は、向こうも急がないと、ウイルスに感染した者達が、私たちの隠れ家に気づいたようなんです」
「わかっています。仲間たちを救うためにみんな頑張ってください。太郎さん今後ともどうぞお願いします」と、次郎が言って深々と頭を下げた。
俺は、次郎の両腕を掴んで、「俺もできるだけのことをする。頑張る」と言った。二人は周りからきつく抱かれた。
「じゃあ、私三人を家につれていくわ」と、麗。
「赤ん坊は人に見られないようにしないとまずいよ」と、俺はいっていた。
「大丈夫よ、レースで隠すから」と、麗。
「俺は、ここで株を扱って金を稼ぐ」と、次郎。
「じゃあ、俺たち二人はパチンコに行く。太郎、良いだろう」と、新次郎。
「事務所はどうなったんだい」
「あっ、忘れた」と、新次郎と次郎がハモッた。
「明日にしよう」と、次郎。
「じゃあ、パチンコだね」

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14.2019/09/06  語田早雲です。 [笑う小説]

14.二つとなりの駅についた。改札口を出て駅の待合室を出ると広場の右脇に不動産屋があった。
「調べたの」と、次郎に話しかけた。
「うん、人口も俺たちが住んでいる街よりは少ないが、工場が多いから人の出入りも多いし、急に人が増えても目立たないと思うよ」
「何十人ぐらい、この街に住ませるんだい」
「まあ、30人くらいかな」と、次郎が答えた。
新次郎は感心なさそうな顔をして、街のあちらこちらを眺めている
「少ないね」
「でも………」と新次郎が答えようとするときに、ドアが開いた。
「すみません」と、次郎が言った。次郎は中に入っていく。俺たちも後に続く。
机の前に座る、白髪交じりの年配のおじさんが、手を差しのべながら、「どうぞ」と言った。
「アパートを借りたいんですが」
「あなた方が入るんで」
「いえ、知り合いの夫婦です。赤ん坊もいるんです」と、次郎。俺は聞いていない。赤ん坊もあそこから出すんか、三人出して慣れてきているが、赤ん坊じゃお産みたいじゃないか。と、呆然としているうちにも、話は進んでいく。
「それじゃあ、見に行きますか」
「はい」と、次郎。
「今、車を出しますから、ここでお待ち下さい」と言うと、おじさんは外に出た。しばらくすると、ドアの向こうに、小型のバンが止まった。
5分ほど流れゆく家々を眺めていると、畑が広がった。街の外れだ。その端に、同じ形の一階建ての家が田の字を描いて四軒並んでいた。アパートじゃなかった。
「2軒空いていますので、両方見てください」との不動産屋さんの指示に従い、どちらも見た。
どちらも、同じ間取りで、どちらもそれなりに綺麗だったけど安普請でもあった。
「どちらにしますか」の問いに、二人は茫然として、答えない。
仕方がないので、「日当たりのいい、奥の家にします」と、俺が答えた。
二人を見ると、どうでもいいような顔をしている。まあ、確かに同じ家だ。
車は事務所の前で止まった。中に入ると、いつの間にか、店の中で、のんびりとお茶を飲んでいる婆さんが、軽く会釈をした。俺たちも軽くしながら中に入った。不動産屋が戻り。契約が始まった。
電車を待っている時に、俺は次郎に聞いた。
「いつ出すんだ」
「三日後に入れるんだから。三日後だろう」
「どこで」
「俺たちのアパートで」と、次郎。
「そんな所で大丈夫か」
次郎も新次郎も俺に不審を抱いているかのような顔つきで見つめた。
「なんだよ、二人して。俺の腹から出すんだろう」俺の声は大きかった。
前を歩く俺が好きなタイプの若い女性が一瞬横目を走らせて俺の顔を見た。
「いままでもやってきたろう。今度だって同じだ」と、新次郎。横で次郎もうなずく。ちょっと離れた所に立った、さっきの女性が聞き耳を立てているように見えた
「だって、赤ん坊が泣き始めたらどうするんだ。他のアパートの住人に知られるじゃないか。まずいだろう」
「赤ん坊が泣くって、何を言っているんだ」
「はあ、君たちの赤ん坊は泣かないの」
二人して、人間のように頷いた。でも答えは、どう見ても人間の答えではない。
太郎は、理解していると思っていたが、彼らとはかなり距離があると、このときは思った。
解説です:もう解説は忘れてばかりいるので、やめようと思います。ちょっと笑える話を、時々入れたいと思います。どういう訳か分かりませんが、笑える話が浮かんで来て、その時は面白がるのですが、メモにも取らないので直ぐ忘れます。今日から出かけるときはメモ帳持参にします。ただし毎日はできません。

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13.2019/09/05  語田早雲です。 [笑う小説]

13.金は俺の金になった。まあ、通帳の中だけの事だ。
帰り道、俺は心配事を打ち明けた。
「おれ、会社の作り方なんて知らないよ」
「大丈夫だ。俺が作る」
「あっ、そうだね。頼む」
「いや、俺たちこそ頼む。感謝しているよ」
「いや、気にするなよ。俺こそ三人に会えて良かったと思っているよ」
「ありがとう。俺たちは君がいなかったら、ここにいられないんだ。これからもよろしく頼む」
「わかった。出来るところまでやってみる。ところで、俺の会社って、何の会社になるんだい」
「まあ、不動産屋で、株とかもやっている感じかな」
「そうだね。これからくるみんなの住むところを確保しておかないと」
「家も建てるし、子供たちの学校も建てないと」
「なんか、わくわくしてきた」
「そうだね。頑張ろう」
「おう」
というわけで、次郎と別れ、二人のいそうなパチンコ屋に行った。二件目にいた。相変わらずだしている。声をかけようとする前に、新次郎がふり返った。にっこりとほほ笑んだ。最近になって、宇宙人も微笑むようになってきた。
「やる」
「うん」
「じゃあ探そう」
「うん、たのむわ」
俺は新次郎の後をついて行くだけだ。
そしてその日も稼いだ。俺の稼ぎは少なかったけど、金は全部俺が受け取った。あした、銀行へ持っていくためだ。
アパートに戻ると一人になった。なんかさみしくなった。こんな気持ちになったことは、今までなかった。人間って不思議だ。宇宙人はもっと不思議だ。もっと深く考える必要があるような気がするが、何も浮かばないまま、布団に入った。
新次郎に起こされた。
「おい、地球人早く起きろ」
「やあ、お早う」
「いや、だいぶ遅い。俺たち先に行く、席は確保しておくから、急いできてくれ」
「わかった。直ぐ行くよ」
俺の部屋に新次郎はいたが、麗はいない。先に行っているんだろう。俺も寝ぼけまなこで起きて、パチンコ屋に向かった。朝食はまだだ。向こうで取ることにした。
急いでいる途中で、どこに行けばいいの知らない事に気が付いた。飛び飛びで並んだ、三店のパチンコ屋の真ん中に、何となく入った。そしてなんとなく、パチンコの列も選んで進むと、新次郎と麗を見つけた。二人が同時に俺を見てみやりと微笑んだ。俺もにやりとしていた。なぜ、二人のいるところが分かったのか、分からない。二人の力だろうか、それとも俺の、いや偶然かも知れない。
新次郎が指さした、二つ離れた空いた席に座った。タバコが置いてある。そのタバコを後ろから手を伸ばして、新次郎が取った。
「タバコ吸うの」
「ああ、二日前から吸い始めた」
俺は頭が混乱した。
「だって、お前は宇宙じ………」じ、で止まった。
「いやぁ、こいつは癖になるな」と言いながら新次郎はにやりとした。
「体は大丈夫」
「大丈夫だよ。俺には全く害がないんだ」
「ふ~ん、宇宙人ってすごいね」
となりの親父が、俺を変な目で見た。
その日は稼いだ。俺が一番だった。と、言っても自慢はできない。新次郎の選んだ台だ。
そんな日々が一週間も続いた。朝早く、次郎と新次郎が二人で、俺を左右から揺すった。大きな地震が来たと思って、がばっと起き上った。
二人して「おはよう」と言った。二人の声がハモッていた。
「おはよ。今日はなんだい」
「会社をつくる。まず事務所を借りる。いまから行こう」
「えっ、もうそんな時間」
「いや、まだ8時ちょっと前だが、離れた場所が良いと思っているんだ」
「近い方が便利だけど」
「いや、みんなが近くに集まり過ぎるのも、目立つような気がするんだ」
「みんなって」
「これから来る仲間達だ」
「という事は、これからいっぱい借りるアパートやマンションのためにかい」
「そうだ、今の内は賃貸で良い」
「わかった。急ごう」
「おう、外で待っている」

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12.2019/09/04  語田早雲です。 [笑う小説]

12.翌日から、俺と新次郎と麗の三人のパチンコ生活が始まった。新次郎は俺に教えてくれると言ったけど、座る台を指示してくれるだけだ。でも、それだけでも、出る台ばかりに座っていると、台の特徴に気がつく。なんとなく、わかり始めている。
その日も、当然三人とも勝った。そんな日々が一週間ほどたった朝、新次郎と俺のアパートに、麗と次郎が来た。
「次郎もやるのかい」と俺は聞いた。
「いや、戸籍を作った。もちろん、俺と新次郎と麗の」
「えっ、いつ作ったの」
「昨日の深夜にできた」
「ど、どうやって」
「役所の戸籍のコンピュータ―に侵入して、入れただけだ」
「そんなことできるの」
「まあ、なんとか」
「すごい。一週間前に日本語も読めないのに初めてのパソコンで、そんな事ができるなんて、すごい」
「三人ともこの町の生まれだ、麗と俺はもちろん兄弟だし、俺と新次郎は同級生だ」
「いつも一緒にいるんだから、当然だね」
「そうだ」
「でも、この街の人は、俺たちがここの生まれだなんて知らないよ」と、新次郎が言った。
「だったら、子供のころに引っ越したと言えばいいよ。団地もあるし、そこで育った事にすれば」と、俺が言った。
「そうだね。でも、これから、この街にくる仲間たちの事を考えると、彼らは違った土地の生まれにするよ」と、次郎。
というわけで、みんなで役所に行った。俺は関係ないかもしれないが、彼らの戸籍が見たかった。
しかし、戸籍というものは、面白くもなんともない。でも、凄い。偽物だろうがなんだろうが、宇宙人の戸籍なんだ。
その戸籍を持って、新次郎は不動産屋に向かった。彼だけのアパートを借りるためだ。俺たち三人はパチンコに行った。二人も分かっている。俺は人文で選ぶと二人に言った。残念ながら、二人は勝ったが、俺は負けだ。金をかなり使ってしまった。まだ、分かってなんかいなかった。
帰り道、二人はそんな俺を責めることもなく、楽しそうに歩いていた。ちょっとさびしい。
アパートに戻り、電気をつけると、新次郎が椅子に座っている。もう何度も経験している。暗闇でも見えるのか電気をつけようともしない。
「アパート借りてきた」
「どこらへん」
「麗と次郎のそばだ」
「良かったね。でも、お金も出ていくね」
「大丈夫だ」
「なんで」
「明日が、宝くじの発表だ」
「あっ、忘れていたよ」
「だいたい、七百万ぐらいだ」
「金額まで分かるんだ」
「売り場にあったのが、あんまり無かったから」
「そ、そんな事ないよ。それだけの金でも十分だよ」
「いや、これからくる者たちのためには十分じゃないよ」
「ごめん」
「良いよ、明日もらいに行く、一緒に行こう。そして、太郎の口座に入れる」
「俺の、だって君達で稼いだ金だよ。口座だって持っているだろう」
「いや、彼から集まる金は太郎の会社の口座に入れる」
「えっ、会社なんて持ってないよ」
「作ってもらう。俺たちはその従業員になる」
「俺が社長、う~ん実感がない」
「まだなっていない」
「それはそうだけど」
「いや、お金はどんどん増える。次郎が株で稼ぐし、また宝くじもあるし」
聞いている俺は、頭がぼーっとしてきた。
「大丈夫か」
「いや、なんでもない」
「集めた金で、これから来る者たちのため、色々な施設も建てる必要がある」
「どんな施設」
「俺たちも、病気はする。しかし、人間の病院にはいけない。俺たちのための病院が必要なんだ」
「三人とも元気そうだけど、病気になるんだ」
「ああ、病気になる者はあまりいないが、この星でかかるかもしれない。前から調べていたけれど、まだ完全じゃない」
「そうだよね。地球上での移民だって病気にかかる恐れがあるんだから、惑星移民もかかるよね」
「そういう事だ。そろそろ、金をもらいに行こう」
「そうしよう」


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11.2019/09/03 語田早雲です。 [笑う小説]

11.四人とも、みんなラーメンと餃子を選んだ。繋がってきたのだろうか。しかし、三人はうまいうまいと喜んでいたが、俺は、餃子はうまいと思ったが、ラーメンがいまいちだと思った。まだ繋がっていない。
帰り路は、新次郎が日本で食べて今まで食べてきたものの話に夢中になっていた。二人は興味しんしんで、聞いている。食べ物までは伝わらないようだ。
さっそく行動開始だ。俺と次郎は電気街に行った。残る二人は、当然パチンコだ。なにを聞いたらいいのか分からなかったが、思い付きで聞いてみた。
「パソコンを買うって言っていたけど、使い方は知っているの」
「いや、何も知らない。新次郎はやっていないから、情報はない」
「大丈夫、説明書とか読めるの」
「まだ、日本語は勉強していないから読めないが、英語は読める。そいつが、英文を頭の中に書いたのを読んだ。だから発音は分からない」
「じゃあ、その英文はまだ頭の中にあるってこと」
「そうだよ」
「すごいね。人間はかなわないよ」
「いや、人間だってあるんだよ、そうじゃなければ文字は読めないよ」
「そう言われればそうだけれど、俺なんか忘れてばかりだ」
「それってすごいね」
「なんだって、忘れることが凄い事だって」
「だって、忘れなければ、新しい事を覚えないじゃないか。俺たちは年をとると物覚えが悪くなるんだ」
「まあ、人間もそうだけどね」
そんな話をしながら、店についた。
彼は、パソコンに夢中になっている。俺は、ただ隣で
その様子を黙って見ている。彼らにはパソコン以上にもっと進んだ物があると思っていた。もしかして、ないのだろうか。後で聞いてみようと思っている間にも、店員にしつこく説明を聞いている。
欠伸が出てきた。彼は夢中だ。店員はしつこい客にうんざりしている。
そして、隣の店に移った。ここでも同じだ。
三店目を出るときに、「待たせて悪かったね。決まったよ」と言って、最初の店に入って、パソコンと外付けのバックアップを買った。
店を出て直ぐ、俺は聞いてみた。それでなにをするんだい。
「まあ、最初は株の勉強だ」
「株か、いいね」
「それだけじゃない、俺たちを日本人にするために使うんだ」
「そんなことができるのか」
「やらないと、戸籍の無い俺たちをこれ以上ここに集められない。このままじゃ太郎に迷惑が掛かる。俺たちが増え続けたら、難民をかくまっている事になってしまうだろ」
「う~ん、300人も急に増えれば、おかしいと思うよね」
「子供たちがいるんだ」
「あっ、子供は当然いるよな」
「それに、俺たちの子供時代は、人間より二倍くらい長いんだ。一人くらいだら、人間の学校に通わせることもできるけれど、何十人にもなると、おかしいと思われる。宇宙人ですからちょっと成長が遅いんです、とは言えないよ」
「子供たちを人間の学校に通わせるなんてできないね」
「だから、俺たちの子供のための学校をつくる」
「だって、成長がそんなに遅い子供たちが学校に通っていたら、怪しまれるよ」
「大丈夫だ、子供たちにも変わってもらうから」
「だって、そんなに人数がいないじゃないか」
「いや、子供たちにも顔を変えてもらうんだ」
「それで、ごまかすわけだ。面白いね」
「そうか、面白いか。そういう考え方って良いね。そういう考え方で顔を変えるって言えば、子供たちも喜んでするだろうね」
「よし、応援する。頑張って」
というわけで、麗のアパートに戻った。麗はまだ戻っていない。部屋に入ってから、何で俺はここまでついてきたのだろうかと思った。
「俺帰る」
「今日は、ありがとう」
「部屋は狭くないかい」
「大丈夫だ、二人して工夫をして、うまくやるよ」
「じゃあ帰る」と言って俺は、俺のアパートに向かった。久しぶりに一人になったような気がする。ずうーと一人ぼっちだったけれど、さみしいとも思わなかった。でも、今ちょっとさみしい。麗と新次郎は今頃どのくらい稼いでいるのだろ。帰ってきたら聞いてみる事にしよう。また、彼らの事を考えている自分に気がつく。いまは、俺も彼らの仲間になっている。

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11.2019/09/03

11.四人とも、みんなラーメンと餃子を選んだ。繋がってきたのだろうか。しかし、三人はうまいうまいと喜んでいたが、俺は、餃子はうまいと思ったが、ラーメンがいまいちだと思った。まだ繋がっていない。
帰り路は、新次郎が日本で食べて今まで食べてきたものの話に夢中になっていた。二人は興味しんしんで、聞いている。食べ物までは伝わらないようだ。
さっそく行動開始だ。俺と次郎は電気街に行った。残る二人は、当然パチンコだ。なにを聞いたらいいのか分からなかったが、思い付きで聞いてみた。
「パソコンを買うって言っていたけど、使い方は知っているの」
「いや、何も知らない。新次郎はやっていないから、情報はない」
「大丈夫、説明書とか読めるの」
「まだ、日本語は勉強していないから読めないが、英語は読める。そいつが、英文を頭の中に書いたのを読んだ。だから発音は分からない」
「じゃあ、その英文はまだ頭の中にあるってこと」
「そうだよ」
「すごいね。人間はかなわないよ」
「いや、人間だってあるんだよ、そうじゃなければ文字は読めないよ」
「そう言われればそうだけれど、俺なんか忘れてばかりだ」
「それってすごいね」
「なんだって、忘れることが凄い事だって」
「だって、忘れなければ、新しい事を覚えないじゃないか。俺たちは年をとると物覚えが悪くなるんだ」
「まあ、人間もそうだけどね」
そんな話をしながら、店についた。
彼は、パソコンに夢中になっている。俺は、ただ隣で
その様子を黙って見ている。彼らにはパソコン以上にもっと進んだ物があると思っていた。もしかして、ないのだろうか。後で聞いてみようと思っている間にも、店員にしつこく説明を聞いている。
欠伸が出てきた。彼は夢中だ。店員はしつこい客にうんざりしている。
そして、隣の店に移った。ここでも同じだ。
三店目を出るときに、「待たせて悪かったね。決まったよ」と言って、最初の店に入って、パソコンと外付けのバックアップを買った。
店を出て直ぐ、俺は聞いてみた。それでなにをするんだい。
「まあ、最初は株の勉強だ」
「株か、いいね」
「それだけじゃない、俺たちを日本人にするために使うんだ」
「そんなことができるのか」
「やらないと、戸籍の無い俺たちをこれ以上ここに集められない。このままじゃ太郎に迷惑が掛かる。俺たちが増え続けたら、難民をかくまっている事になってしまうだろ」
「う~ん、300人も急に増えれば、おかしいと思うよね」
「子供たちがいるんだ」
「あっ、子供は当然いるよな」
「それに、俺たちの子供時代は、人間より二倍くらい長いんだ。一人くらいだら、人間の学校に通わせることもできるけれど、何十人にもなると、おかしいと思われる。宇宙人ですからちょっと成長が遅いんです、とは言えないよ」
「子供たちを人間の学校に通わせるなんてできないね」
「だから、俺たちの子供のための学校をつくる」
「だって、成長がそんなに遅い子供たちが学校に通っていたら、怪しまれるよ」
「大丈夫だ、子供たちにも変わってもらうから」
「だって、そんなに人数がいないじゃないか」
「いや、子供たちにも顔を変えてもらうんだ」
「それで、ごまかすわけだ。面白いね」
「そうか、面白いか。そういう考え方って良いね。そういう考え方で顔を変えるって言えば、子供たちも喜んでするだろうね」
「よし、応援する。頑張って」
というわけで、麗のアパートに戻った。麗はまだ戻っていない。部屋に入ってから、何で俺はここまでついてきたのだろうかと思った。
「俺帰る」
「今日は、ありがとう」
「部屋は狭くないかい」
「大丈夫だ、二人して工夫をして、うまくやるよ」
「じゃあ帰る」と言って俺は、俺のアパートに向かった。久しぶりに一人になったような気がする。ずうーと一人ぼっちだったけれど、さみしいとも思わなかった。でも、今ちょっとさみしい。麗と新次郎は今頃どのくらい稼いでいるのだろ。帰ってきたら聞いてみる事にしよう。また、彼らの事を考えている自分に気がつく。いまは、俺も彼らの仲間になっている。

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10.2019/09/02 語田早雲です。 [笑う小説]

10、裸の男が俺の前で、「川田次郎と申します。よろしく」と言った。
「なまえ自分で付けたんですか」
「私、地球は初めてですけれど、新次郎と麗の話が伝わる物ですから、覚えました」
「えっ、伝わるって、どういうことですか。とてつもなく遠いところにいたんですよね」
「太郎、俺たちは繋がっているんだ。遠くにいる俺がしている事を知りたければ次郎は知ることができる。麗も同じだ」
「良いような気もするけど、恥ずかしいような気もする。だって人に知られたくない事もあるだろう」
「ああ、それは互いにルールをわきまえているから。第一ルールを破ったらみんなに直ぐに知られて、誰にも相手してくれないよ。でも、いい事がたくさんあるんだ。俺が太郎の前でしてきた、パチンコも宝くじも俺だけの力じゃないんだ」
「それって、すごいね。俺のように不器用な男で、君たちみたいになれたら。最高だね」
「そうだね。これからも俺たちは太郎さんにお世話になるから、なんとかします」と、次郎が言った。
「ほ、本当ですか」
「どれほどのことができるか分かりませんが、これから実験を時々やります、モルモットは使えませんから、私と太郎さんでやりましょう」
「ええ、お願いします」
「次郎だったら、やってくれるよ。俺たちも太郎ともっと繋がりたいからな」
「それ言われたら涙が出ちゃうよ」
「でも、出ていませんね」と、麗が言った。
「いや、それは出る出ないは関係なくて、なんて言ったらいいか………」
「ハハ、みんな分かっているよ」
「心がつながったのか」と太郎。
「そうだね」と三人が言った。
「それじゃあ、ちょっと早いけど飯でも行くか」と、新次郎が言った。
「俺の服はどこにあるの」
「次郎はずうーっと裸だった」
アパートを出て歩道を二組になって歩いた。俺と新次郎が並んだ。後ろに兄弟が並んでついて来る。
「太郎、俺たちが何で日本を選んだか分かるか」
「紛れやすいとか、住みやすいからとかじゃないの」
「まあ、それもあるが、人々だ」
「それって、日本人の事を言っているのか」
「そうだ、日本人がこの星の上では、俺たちに一番近いからだ」
「それって、もしかして、人と人の繋がりか」
「そうだ」
「でも、俺たち地球人は心までつながっていないよ。離れ離れになっているとお互いの考えている事を伝えあえないよ」
「いや、日本人は困っている人を見ると直ぐに助けようとする。あれは、人と人の繋がりだよ」
「ふ~ん、そうかもしれないな」
俺は歩きながら考えた。新次郎と麗と次郎、彼らは俺の前に現れる順番ごとに、より人間らしくなってきた。次郎なんて完璧だ。あそこがちょっと大きいが俺の嫉妬かもしれない。次郎と新次郎が言ったように彼らは繋がっているんだ。
着いた。また、ラーメン屋だった。

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9.2019/08/30 [笑う小説]

9.スマートフォンが鳴っていた。眠たい目をこすりながら、返事をした。
「おはよう、新次郎だ。また、頼む」
「麗の兄さんか、どこで出すんだ」
「こっちに来てくれないか」
「わかった。いま直ぐ行く」
「ありがとう」
俺は顔を洗って、ションベンをして、服を着て、アパートを出た。もちろんコンビニによった。麗がいるアパートの前に来た時、麗に苗字がない事に気づいた。新次郎と同じ吉田で良いと思った。ドアの前に近づくとドアの方が開いた。
「まってたよ」
「ああ」
ドアが閉まった。
「すぐやるんか」
「早い方が良いだろう」
「なんだかなれたみたいだ」
「痛くないからね。一つ聞いて良いか」
「なに、麗はどうやって出てきたんだ。その前、足音もなかったから、不思議に思ったんだ」
「そうだ、見ていないんだったね。飛び出てくるんだよ。麗は俺が受け止めたんだ」
「受け止めた時、倒れたりしないのか」
「大丈夫だ。ふんわりと下りてくるから」
「それ。凄いね。なんだか見たくなった」
「ああ、見た方がいいかもしれない」
「そうするは、ウルトラマンは持って来なかったし」
「おはようございます」
麗が台所から出てきた。
「コヒーを入れたけど飲みます」
二人して、「はい」と言った。互いにニヤリとした。
インスタントでなかった。良く分からないけど、うまい。
「じゃあやろう」と、俺の方から言った。麗がまくらを用意してくれた。さすが宇宙人でも女性だ。俺の腰の右横に新次郎が立っていた。
「良いよ」と俺は言っていた。
「おう」
新次郎の掛け声とともに、寝ている俺の上の天井の一部が丸く明るくなった。俺の腹から灯りが出ている。と気づくと同時に、俺の腹から何かが飛び出てきた。素っ裸の人間の男だった。真上に上がったそいつを新次郎はただ見ているだけだった。俺もただ見ている。上半身を、お辞儀をしているように曲げて、そのまま下に居り始めた。ゆっくりと下りてきた男は股を広げて俺を跨いだ。
「初めまして、太郎さんありがとうございます」
丁寧に挨拶してくれた。しかし、素っ裸だ。こっちを向いている。股間から下がるでかい物が揺れている。茫然としながら、どうにか返事をした。
「どういたしまして」
寝ている俺の横で三人の宇宙人は抱き合って、喜んでいる。一人は真っ裸だ。上半身を起こした。三人は、口を動かしている。が俺には聞こえない。ちょっとさびしい。起き上ろうとしたら、新次郎が手を差し出してくれた。
「太郎、お前さんは俺たちにとって希望の扉なんだ。これからもよろしく頼む」
「うん、できるだけがんばるよ」
三人で、俺を抱きしめた。ちょっと、涙が出てきた。
解説:良く分からないけどお涙ちょうだいになってしまいました。

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8.2019/08/29 [笑う小説]

8.三人で一部屋に寝るのもおかしいと思う。女性が一人いるのだ。だが、どっか別の世界の宇宙人だ。彼女は新次郎の向こうに寝ている。俺も女性は好きだが、宇宙人は遠慮したい。だって、体の構造が分からないのだ。でも、新次郎のように、裸になっても人間に見えるんだろうな。そんな事を考えながら、眠りに入った。俺が目を覚ました時には二人は、布団は片付け並んで俺を見降ろしている。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
「二人とも眠れなかったのかい」
ボーっとしている二人に声をかけた。
「前から思っていたんだけど、人間ってかなり寝るな。俺たちは、太郎の半分も寝れば十分だ」
「それ、いいね」
「今日は、アパート探しだ」
「三人で行くのか」
「そうだ」
というわけで、コンビニのパンを食いながら、不動産屋に向かった。
「彼女の名前はどうする。俺が借りるアパートだけど彼女が入るんだから、俺と彼女の間に何らかの関係がないと、後々面倒かも」
「妹か」
「いや、従兄で良いか」
「いいよ」
「名前はどうする」
「そんなに急がなくても」
「呼び名がないと可笑しいよ」
「じゃあ、考えてくれ」
「よし、麗にする。いいかい」
「いいです」
アパートは直ぐに見つかった。現金を直ぐに出したら、車で連れてもらい。電気も繋がっていないのにその日から二人は住まい始めた。おれは、とぼとぼとさみしいような気持になって、アパートに戻った。もしかしたら、あの二人は恋人同士かもしれない。久しぶりに会った恋人同士か。俺は一人だ。家についたら、スマートフォンが鳴った。新次郎だった。
「家具をかったら、金が付きた。明日の軍資金を頼む」
「わかった。銀行から下ろしておくよ」
俺たちの金は銀行に預金していた。夕食は久しぶりにトンカツだった。アパートに帰って、一人ボーっとして考えた。あいつらといれば仕事もないがなんとか生きていけそうだ。だけど、あいつらは人間にとって害にならないのだろうか。まあ、全部で300人ぐらいだったら危害を加えられるとは思えない。それに新次郎は嘘をつかない。本当はどんな顔と体形をしているのかもしれないが、いい奴だ。俺は好きだ。でも、本当の姿は化け物みたいなのかもしれない。
解説者:時々忘れます。すみません。先の事を時々考えているのですが、正直言ってどうなるか分かりません。つまらなくならないようにしたいと思います。でも、説明が多いかもしれません。次は頭の良いお兄さんが登場します。

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7.2019/08/28 [笑う小説]

7.翌日も、パチンコだった。毎日勝てるのはうれしいんだけれど、やっていても楽しくない。勝てることが決まっているのに、頑張る気もしない。それでも、新次郎達のために頑張ろうとやっている。
帰り道で聞いてみた。
「次にくる女性は、アパートを自分で借りるつもりか」
「いや、それは無理だ。まだ日本人になってないんだから、太郎が借りてくれ」
「そうする。で、いま日本人になっていないって言ったよな」
「ああ」
「という事は、なれるのか」
「どうやって」
「三番目も直ぐ来る。こいつはとてつもない天才だ。なんでもできる」
「存在していなかった人間の本物の履歴書を作れるのか」
「ああ、家族も一緒にな」
「じゃあ、三番目は、彼女の兄さんか」
「太郎、お前人間にしちゃ、凄いな」
「おい、人間を下に見るなよ」
「すまん」
次の日も、パチンコだった。
その翌日の朝、彼女の履歴書を渡された。つまり、産まねばならないのだ。したくないのだが、やるしかない。
「今すぐ彼女を出すのか」
「頼む、そうしてくれ。痛くないから」
「痛くないけど、心が折れそうだよ」
「大丈夫だ。太郎、お前の心は真っ直ぐだ」
「う~ん、ありがとう」なんだか分からないが返事をしていた。
「今回から、横になってもらう。俺が出てくる者を上に引っ張る。いいな」
「わかった」と言って、俺は素直に畳の上に横になった。
「これを被れ」と新次郎は言って、セルロイドのウルトラマンの仮面を出した」
「ありがとう」
出てくるところを見たくない俺のことを考えてくれていたのだ。被って目を開けたら、ウルトラマンの開いた丸い目から上が見えた。
「あのう、これ見えるんだけど」
「えっ、見たくなければ目をつぶればいいじゃない」
この返事は間違ってはいないけど、どっかおかしい。と、思っていると。
「もうすぐ始まる」
俺は無意識にシャツを上げて腹を出した。
「それ、意味ないよ。俺が出た時は腹は出していなかったじゃないか」
ちょっと恥ずかしい、と思って下げようとした時。
「始まった」
シャツと腕は途中だったが、俺は固まってしまった。
しばらくして、「終わったよ」と新次郎が言った。ウルトラマンの仮面を外そうとしたら、「まだ裸だ」と言われた。トギマギしてしまった。宇宙人でも若い女性の裸は見てみたい。
「良いよ」と言われた」
上半身を立てて、ウルトラマンはやめた。驚くほど可愛い女性が畳に上に座って、手をついて頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「は、はい」声が上ずってしまった。あまりにも可愛い、彼女が外に出たらみんなの注目になって、人だかりができるかもしれない。そう思わせるほど可愛いのだ。小顔に大きな目、もう人間の限界を超えている。まあ人間じゃないから仕方ない。と、思ったとたん、俺は言っていた。
「まずい、こんなに可愛いと目立ち過ぎる。芸能界に引っ張られて、普通の生活ができなくなる」
彼女は不思議そうに俺を見つめている。
「わかった。ちょっと工夫してもらおう」
「わかりました」とその可愛い人は俯いた。そして、直ぐに顔を上げた。
驚いた。眼がちょっと小さくなって、口がいくらか大きくなって、全体のバランスがさっきと違うのだ。まあ、可愛いがどこにでもいる感じだ。
おれば茫然としてしまった。
「これでよろしいでしょうか」
「はい」返事が上ずっていた。

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5.2019/08/26 [笑う小説]

5.吉田新次郎のパチンコはすごかった。彼が進めてくれた台に座ると、直ぐさま当たりになり、それがかなり続いた。一つ離れた台の新次郎も、ちょっと遅れて出し始めた。
午後をちょっと過ぎてから、二人して飯を食った。黙ってもくもくと食った。
カレーだ。新次郎がうまそうに食っている。宇宙人らしき男がカレーを嬉しそうに食っているのはおかしいと思わない事に疑問を感じたが、どう見てもどこにでもいる、日本の男にしか見えない。おかしいと思いながら、目の前でカレーを食っている新次郎がだんだん好きになってきている。
「おい、もう十分だ」と新次郎に声をかけられた。黙って頷いた。
かなり稼いだ。二人して、15万ほどだ。
翌日は、別の店に行った。ここでも稼いだ。17万だ。帰り路、新次郎が言った。
帰り道で、声をかけた。「明日もやるのか」
「明日は別の事をする」
「なにをするんだ」
「宝くじだ」
 明日は、宝くじの販売が始まる。新聞に出ていた。
「どこへ行くんだ」
「行列のできるところにはいかない」
「なぜ」
「選べないから」
「もしかして、前にやっているのか」
「ああ、ここが好きだ」
「日本ってこと」
「そうだ。他の国も言ってみたが、ここが一番良い」
「どういう意味で」
「リラックスできるからだ」
「そうか、もしかして敵に追われているのか」
「いや、彼らは俺たちを追う気はない。俺たちの星と体を奪ったから、もう十分なはずだ」
「体を奪うって、どういう事だ」
「地球で言えば、ウイルスのようなものだが、あいつらはかなりの頭脳を持っている。俺たちの星の人間達に侵入し、自分達の好きなように扱っているんだ」
「どんな事をしているんだ」
「まあ、それがどうしょうもない事ばかりしている。かなりの頭脳と言ったが、しょせんウイルスだ。文化と言うものを持っていない。だから、体を奪われた人達は、毎日踊っている。やりたくもないのに、毎日踊っている」
「それはつらいだろうね」
「まあ、それでも、そっちが好きなやつがいない事もないが」
「さっき、俺たちって言ったね」
「ああ、ウイルスに乗っ取られていないものがいる」
「どのくらいいるんだ」
「200人から300人くらいだ。よろしく頼む」
「う~ん、そんなに沢山俺は産むのか」
「いや、産むわけじゃない。太郎の腹を通過するだけだ」
「そんな事を言っても、腹から出てくれば産んだような気になるんだよ」
「そ、そんなものか」
解説者:久しぶりです。なにを解説したらいいか分からなくなりまして、しなかったのです。それに、お笑いをするつもりが、笑えなくなったようで、済みませんでした。今回はいくらか笑えたと思いますがどうでしょうか。

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4.2019/08/23  語田早雲 [笑う小説]

4.銭湯に行ったが、腹は問題なかった。奴の体も問題なかった。普通の日本の男の体をしている。
しかし、どこかで見慣れた体に見えた。鏡の中の体を見くらべたら、どうも俺の体にそっくりだ。あそこまで似ている。俺を裸にした分けが、これだったのだ。アパートに戻った。
布団は、一人分しかない。仕方がないので一緒に寝た。
目が覚めたら、あいつはいなかった。トイレから水の音が聞こえてきた。宇宙人もウンコはするようだ。俺も起きた。パジャマは脱がされていない。
「おはよう」
「おはよう。しかし、なんでそんなに日本語がうまいんだ」
「ああ、テレビを見ていたからな。それで覚えたんだ」
「すごいね」
「なあに、みんな日本語をしゃべれるよ。これから、日本に来るやつらだよ」と、言いながら俺の腹を指差した。腹が、キューっと鳴った。
「ここで、この部屋で出さなければならないのか」
「人数が急に増えたら、ここでも問題になるだろう」
「うん、狭いから寝るのも大変だし、近在の人々にも知られてしまう。もしかしたら、移民と間違われるかもしれないな」
「移民であることは、間違いない。そこでだ。家が必要になる」
「俺に期待するな」
「もちろん期待していない」
「う~ん、ちょっと悲しい」
「そこで、金を稼がなければならない。協力してほしい」
「なにをする気だ。まさか犯罪じゃないよね。犯罪はやらないよ」
「犯罪なんかするわけない。まず、最初はパチンコをやる」
「バカを言うなよ。あんなもので、金が稼げるわけがないじゃないか」
「いや、稼げる。いくら持っている、俺に貸してくれ」
「二万ちょっとだ」
「じゃあ、半分貸してくれ。後の半分は、あんたの分だ」
「俺もやるのか」
「もちろん、やってもらう」
「俺うまくないよ。勝った事ないんだから」
「大丈夫だ。俺の選んだ台に座って、打ち続ければ良いんだ」
「しかし、何でも知っているみたいだね」
「実は、日本にくるのは二度目だ。あのときもパチンコは勝った。三回やったが全勝だ」
 と言う訳で、二人並んでパチンコ屋に向かった。歩きながら、彼の名前を聞いたら、周波数が違うから、人間には聞こえないと言われた。じゃあ名前をつけてやると言って、吉田新次郎にした。喜んでいた。もちろん、俺の名前を教えた。原田太郎だ。

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3.2019/08/22 [笑う小説]

3.立ち上ると、俺は裸だった。奴を見ると俺の服を着ている。なんか体形がおかしい、人間離れしている。こんなにも違うと、俺は裸の恥ずかしさも感じない。 
どうにか着替えて、奴を見ると、長すぎる脚と下り過ぎた肩が普通の体形になっている。こいつはどう考えても人間じゃない、と思ったけれど、顔を見ると人間の顔だ。その顔がニコニコ微笑んでいる。
「じゃあ行くか」と、奴が言った。
「おう」
俺は何時ものスニーカーモドキを履き、あいつは皮靴を履いた。雨の時は底のほうが濡れる奴だ。
月が出ている夕暮だ。二人とも黙ったまま歩道を並んで歩いた。向かいから人が来ると、こいつは素早くよける。ちょっと早い。良い奴かもしれないと思った。
顔を見ると、最初に見た時とはかなり変わっていた。どこにでもいる普通の男に見える。
「それ以上変わるなよ。誰だか分からなくなる」
真面目そうな顔で、コクリと頷(うなづ)いた。
ラーメンは二人とも味噌ラーメンにした。俺たちをじろじろ見る奴はいない。
彼の変化は成功だ。
帰り路、俺は考えた。こいつは、人間世界にとって、どんな存在なのだ。もしかして、地球征服を狙っている宇宙人達のスパイかもしれない。それがわかった時、俺はこいつを殺せるか。思わず、隣を歩いている奴の横顔を見つめていた。奴は、頬笑みを返した。
それが、俺の心を読んで返したものかどうか分からないけれど、俺も微笑んだ。
アパートに着いた。俺は銭湯に行きたいと思った。けれど、この腹では銭湯に行けるのか、部屋のシャワーで我慢するか。
「俺、銭湯に行きたいが、この腹で行けるのか」
「大丈夫だ、今日は誰も出て来ない」
「えっ、と言う事は、この後もやってくるのか」
「まあ、よろしく頼む」
「何人ぐらいくるんだよ。あんまりいたら、おれ警察に届けるよ」
「警察に話しても、笑われるだけだと思うよ。大丈夫だ今度出すときは、俺がいるから驚かせないようにやるよ」
「驚かせないといっても、一回やっているからそんなに驚かないと思うけど、何のためにやっているのか教えてくれないと、やっていられないよ」
「わかった。明日話す。それより、銭湯に行こうよ」
「腹に、穴は開かないよね」
「大丈夫だ、俺が太鼓判を押す」

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2.2019/08/21 [笑う小説]

2.俺はぼんやりと目を覚ましていた。いつもの天井が見える。と、同時に、銭湯から始まった出来事が、頭の中で走りまわり、あの黒い塊が腹から突き出た時のショックが体を強ばらせた。
体を起こして腹を見ようとしたら、「よう、元気」と。男のガラガラ声だ。見ると美人だ。しかし、鼻の下に髭が生えている。細いがひげだ。綺麗に八の字をかいている。再び頭が混乱してきた。
「キー君は誰だ」声がハスキー声になっていた。
「いやぁ、驚かしてごめん。下を向いていたものだから、頭であいさつしてしまった」と、言うと同時に体を回して黒い後頭部を掌で叩いた。
俺の頭が、腹から出てきた黒い塊と目の前の黒い頭を比較していた。答えは出ない。
「思い出してくれたかな。こいつが最初に出てきたんだ」と言いながら、そいつは後頭部をピタピタと掌で叩いた。
「俺の腹から出てきたのが、あんたの頭だというのか」
「ああ、俺の頭だ」
「でも、その体はどこから来た」
「なにを言っている。頭と体はたいてい繋がっているんだ」
「う~ん、それはそうだけど、なんで俺の体から出てくるんだ。まさか俺の子供か、俺が産んだのか。だとしたら、俺は誰かに寝ている間に、犯されてしまったのか。いやだよー」
「あのね~よく考えてくれよ。俺は赤ん坊じゃないだろう」
「う~ん、赤ん坊じゃない。だとしたら、誰なんだ」
「じゃあ、自己紹介をする。本当のことを言うぞ、驚くなよ。俺は、この世界の人間じゃない」
「う~ん、人間じゃないのか。じゃあロボットか」
「お前の日本語おかしいぞ。俺は、お前達とかなり違うが人間だよ。この世界の者じゃないんだ」
「この世界の者じゃないけど、この世界にいるわけだな。じゃあ、どこの世界の人間なんだ」
「なんか変なとこに来てしまった。俺がいた世界と言うのが、これが説明できないんだ」
「なんでだ」
「いやぁ、よくわからないんだ」
「つまり、お前は馬鹿だという事か」
「まあな」
「最初にここに来たんだろう。じゃあどうでもいい奴を送り付けたわけだ」
「まあ、そういう事になるな」
「お前可哀そうなやつだな。なんかうまいものでも食いに行くか」
「うれしいな、あんたいい奴だな、どっかおかしいけど。よろしく頼む」
「おう、まかしとけって」
解説:SFの話をしようと思っていたのだけれど、なんかそれてきてしまいました。この物語はどうなってしまうんでしょう。

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2019/08/20  [笑う小説]

「 慣用句に代わるお笑い 」 語田早雲です。
どうも慣用句や諺に限界を感じてしまって、意欲がしぼみ始めてしまいました。そこで、お笑い小説を始める事にしました。馬鹿馬鹿しい話が好きなので、嫌いな人もいるかもしれませんが、好きなようにやらせていただきます。
「宇宙ステーションはつらい」
1、いつもの銭湯に向かった。夕方にもなっていないので、人はまばらだ。素っ裸になって、ガラス戸を開け、洗い場に入った。
どういう訳か、男達が俺を見ている。俺ははずかしやがりと言う訳ではないが、股間の前にタオルを持ってくる。男達の顔を良く見ると、誰もが俺のお腹のあたりを見つめている。俺も、見た。ギャーと声を出してしまった。腹に穴があいているのだ。それも人の頭が入るほどの大きさだ。
いつの間にかタオルで隠して、飛ぶように脱衣棚の前に戻り、シャツとズボンを身につけて銭湯から逃げ出し、二つ角を曲がり、二階のアパートに戻っていた。ドアを閉めて直ぐ、その場に座り込んでしまった。頭は必死で考えているが、考えがまとまらない。救急車を呼んだ方がいいか、それとも寝れば治るか、それとも手遅れか、腹に穴が開いて生き続けることなんて、喉が渇く、親に電話して腹の穴の話をした方がいいのか、大きな屁をこいた。
屁で我に返った。腹に穴が開いて、屁をひることができるのか、やはり病院に行って聞いた方が、しかしあの大きさの穴が開いていたら、もう死んでいてもおかしくない。
俺は、頭がおかしくなってしまったのか。もう駄目なのか。と思いながらも、体の方が動いてくれて、シャツを脱ぎ始めた。腹の方を恐る恐る見ると、穴なんか開いていない。
嬉しくなって、立ち上がろうと思った時に、腹に急に穴が開いて、黒い丸いものが腹から突き出てきて、こう言った。
「オゲンキデスカ」
俺は、そのまま気を失った。
解説:小説にこんな事をして良いのかどうか良く分かりませんが、解説します
実はこの先がハッキリと決まっていません。そんなわけで、今後の失敗した時の言い訳ができるように、解説を入れる事にしました。乞うご期待。

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366 2019/08/19 月 [笑えるショートショート]

366 語田早雲です、話に入ります。
幽霊の噂がある脇道に止められた真夏の夜の車中にて。
「キャー気味が悪いわ、何か変よ」
「そう言えば腐っているような臭いがしたね」
「えっ、寒気はしたけど臭いはしないわ」
「寒気ってほどじゃないだろう、確かに温かくはなかったが」
「あなたって変よ」
「お前だって変だ」
「なによ。こんなことで私たちがいがみ合っていたら、もしかして出てくるかもしれないは」
「なに言っているんだ、もう何もないよ」
「あなたって、私の言っている事にいちいち逆らうのね」
「ゆぅッ、喉がつかえた」
「それって、幽霊の仕業よ」
「バカを言うな、ゆで卵の仕業だ」
慣用句:気味が悪い。
意味: なんとなく恐ろしい。なんとなく気持ちが悪い。

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