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22.2019/09/19 語田早雲です。 [笑う小説]

22.社長室に入ると、すでに準備は整っていた。と言っても俺が寝る床にマットが引かれているだけだ。枕とウルトラマンのマスクが並んでいる。いまはウルトラとマットと枕は担当が管理している。俺は寝るだけだ。でもすごい事をしているんだ。人間を、いや宇宙人を腹から出している。こんな奴は、どんなに宇宙が広くても俺ぐらいだ。と言いたいけれど、誰にも言えない。
川田部長がノックもせずに部屋に入ってきた。
「ノックは」
「あっ、すみません」
俺は、彼の目を見た。次郎も微笑んだ。俺もつられて微笑んだ。
ドアが閉まって直ぐ、ノックの音がした。新次郎の顔が扉の隙間から出てきた。「おはよう」と新次郎。
「おはよう」俺と次郎の声がハモッタ。宇宙人のと人間のハモリだ。
「今日はどうしたの」と俺が聞いた。
「3人も来るから手伝いだ。麗も今来る」と新次郎が言い終わると、ドアが開いた。
「持って来たわよ。三人分」服だ。男一人分の服と女性二人分だ。普通のサラリーマンとサラリーウーマンの服だ。
「おはよう」三人の声がハモッタ。
「遅くなりました」麗はおはようは言わないらしい。
久しぶりに4人がそろった。
「じゃあ、社長そのマットに横になってください」と、次郎。
「はい」これで何回目だっと、思いながら横になり、ウルトラの父に、いや母になるんだ。
「いくぞ」の掛け声を次郎が言った。
「おう、一人目が出てきたぞ」と新次郎。
「うまいね、着地が」と、次郎。
「う~ん,俺も見たい」と、俺。
「だめよ」と、麗。
というわけで、どうにか3人が出てきた。
俺は、いつものようにウルトラマンのマスクをしながら、椅子に座る。慣れたものだ。次郎の合図でマスクを剥ぐ。
服を着終えた三人が、俺に深々と頭を下げて、「お世話になります」と言った。
どう言う訳か、後から来たものほど、どんどん人間らしいあいさつになっていく。みんな伝わっているんだ。
あの1階の部屋は、実は幾つもの小さい小部屋になっていて、一人で入る。そして、上下四方をなまりに包まれた壁が遮断するのだ、他の者との繋がりを。 
そして、自分というものを取り戻すのだ。他の者と繋がり過ぎて、自分を見失った者達が。このことを新次郎から初めて聞いたとき、なにも感じなかった。けれど、こうやって色々な宇宙人と出会うと、そんな事をする気持もなんとなく分かってきた。

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