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3.2019/08/22 [笑う小説]

3.立ち上ると、俺は裸だった。奴を見ると俺の服を着ている。なんか体形がおかしい、人間離れしている。こんなにも違うと、俺は裸の恥ずかしさも感じない。 
どうにか着替えて、奴を見ると、長すぎる脚と下り過ぎた肩が普通の体形になっている。こいつはどう考えても人間じゃない、と思ったけれど、顔を見ると人間の顔だ。その顔がニコニコ微笑んでいる。
「じゃあ行くか」と、奴が言った。
「おう」
俺は何時ものスニーカーモドキを履き、あいつは皮靴を履いた。雨の時は底のほうが濡れる奴だ。
月が出ている夕暮だ。二人とも黙ったまま歩道を並んで歩いた。向かいから人が来ると、こいつは素早くよける。ちょっと早い。良い奴かもしれないと思った。
顔を見ると、最初に見た時とはかなり変わっていた。どこにでもいる普通の男に見える。
「それ以上変わるなよ。誰だか分からなくなる」
真面目そうな顔で、コクリと頷(うなづ)いた。
ラーメンは二人とも味噌ラーメンにした。俺たちをじろじろ見る奴はいない。
彼の変化は成功だ。
帰り路、俺は考えた。こいつは、人間世界にとって、どんな存在なのだ。もしかして、地球征服を狙っている宇宙人達のスパイかもしれない。それがわかった時、俺はこいつを殺せるか。思わず、隣を歩いている奴の横顔を見つめていた。奴は、頬笑みを返した。
それが、俺の心を読んで返したものかどうか分からないけれど、俺も微笑んだ。
アパートに着いた。俺は銭湯に行きたいと思った。けれど、この腹では銭湯に行けるのか、部屋のシャワーで我慢するか。
「俺、銭湯に行きたいが、この腹で行けるのか」
「大丈夫だ、今日は誰も出て来ない」
「えっ、と言う事は、この後もやってくるのか」
「まあ、よろしく頼む」
「何人ぐらいくるんだよ。あんまりいたら、おれ警察に届けるよ」
「警察に話しても、笑われるだけだと思うよ。大丈夫だ今度出すときは、俺がいるから驚かせないようにやるよ」
「驚かせないといっても、一回やっているからそんなに驚かないと思うけど、何のためにやっているのか教えてくれないと、やっていられないよ」
「わかった。明日話す。それより、銭湯に行こうよ」
「腹に、穴は開かないよね」
「大丈夫だ、俺が太鼓判を押す」

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