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4.2019/08/23  語田早雲 [笑う小説]

4.銭湯に行ったが、腹は問題なかった。奴の体も問題なかった。普通の日本の男の体をしている。
しかし、どこかで見慣れた体に見えた。鏡の中の体を見くらべたら、どうも俺の体にそっくりだ。あそこまで似ている。俺を裸にした分けが、これだったのだ。アパートに戻った。
布団は、一人分しかない。仕方がないので一緒に寝た。
目が覚めたら、あいつはいなかった。トイレから水の音が聞こえてきた。宇宙人もウンコはするようだ。俺も起きた。パジャマは脱がされていない。
「おはよう」
「おはよう。しかし、なんでそんなに日本語がうまいんだ」
「ああ、テレビを見ていたからな。それで覚えたんだ」
「すごいね」
「なあに、みんな日本語をしゃべれるよ。これから、日本に来るやつらだよ」と、言いながら俺の腹を指差した。腹が、キューっと鳴った。
「ここで、この部屋で出さなければならないのか」
「人数が急に増えたら、ここでも問題になるだろう」
「うん、狭いから寝るのも大変だし、近在の人々にも知られてしまう。もしかしたら、移民と間違われるかもしれないな」
「移民であることは、間違いない。そこでだ。家が必要になる」
「俺に期待するな」
「もちろん期待していない」
「う~ん、ちょっと悲しい」
「そこで、金を稼がなければならない。協力してほしい」
「なにをする気だ。まさか犯罪じゃないよね。犯罪はやらないよ」
「犯罪なんかするわけない。まず、最初はパチンコをやる」
「バカを言うなよ。あんなもので、金が稼げるわけがないじゃないか」
「いや、稼げる。いくら持っている、俺に貸してくれ」
「二万ちょっとだ」
「じゃあ、半分貸してくれ。後の半分は、あんたの分だ」
「俺もやるのか」
「もちろん、やってもらう」
「俺うまくないよ。勝った事ないんだから」
「大丈夫だ。俺の選んだ台に座って、打ち続ければ良いんだ」
「しかし、何でも知っているみたいだね」
「実は、日本にくるのは二度目だ。あのときもパチンコは勝った。三回やったが全勝だ」
 と言う訳で、二人並んでパチンコ屋に向かった。歩きながら、彼の名前を聞いたら、周波数が違うから、人間には聞こえないと言われた。じゃあ名前をつけてやると言って、吉田新次郎にした。喜んでいた。もちろん、俺の名前を教えた。原田太郎だ。

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