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12.2019/09/04  語田早雲です。 [笑う小説]

12.翌日から、俺と新次郎と麗の三人のパチンコ生活が始まった。新次郎は俺に教えてくれると言ったけど、座る台を指示してくれるだけだ。でも、それだけでも、出る台ばかりに座っていると、台の特徴に気がつく。なんとなく、わかり始めている。
その日も、当然三人とも勝った。そんな日々が一週間ほどたった朝、新次郎と俺のアパートに、麗と次郎が来た。
「次郎もやるのかい」と俺は聞いた。
「いや、戸籍を作った。もちろん、俺と新次郎と麗の」
「えっ、いつ作ったの」
「昨日の深夜にできた」
「ど、どうやって」
「役所の戸籍のコンピュータ―に侵入して、入れただけだ」
「そんなことできるの」
「まあ、なんとか」
「すごい。一週間前に日本語も読めないのに初めてのパソコンで、そんな事ができるなんて、すごい」
「三人ともこの町の生まれだ、麗と俺はもちろん兄弟だし、俺と新次郎は同級生だ」
「いつも一緒にいるんだから、当然だね」
「そうだ」
「でも、この街の人は、俺たちがここの生まれだなんて知らないよ」と、新次郎が言った。
「だったら、子供のころに引っ越したと言えばいいよ。団地もあるし、そこで育った事にすれば」と、俺が言った。
「そうだね。でも、これから、この街にくる仲間たちの事を考えると、彼らは違った土地の生まれにするよ」と、次郎。
というわけで、みんなで役所に行った。俺は関係ないかもしれないが、彼らの戸籍が見たかった。
しかし、戸籍というものは、面白くもなんともない。でも、凄い。偽物だろうがなんだろうが、宇宙人の戸籍なんだ。
その戸籍を持って、新次郎は不動産屋に向かった。彼だけのアパートを借りるためだ。俺たち三人はパチンコに行った。二人も分かっている。俺は人文で選ぶと二人に言った。残念ながら、二人は勝ったが、俺は負けだ。金をかなり使ってしまった。まだ、分かってなんかいなかった。
帰り道、二人はそんな俺を責めることもなく、楽しそうに歩いていた。ちょっとさびしい。
アパートに戻り、電気をつけると、新次郎が椅子に座っている。もう何度も経験している。暗闇でも見えるのか電気をつけようともしない。
「アパート借りてきた」
「どこらへん」
「麗と次郎のそばだ」
「良かったね。でも、お金も出ていくね」
「大丈夫だ」
「なんで」
「明日が、宝くじの発表だ」
「あっ、忘れていたよ」
「だいたい、七百万ぐらいだ」
「金額まで分かるんだ」
「売り場にあったのが、あんまり無かったから」
「そ、そんな事ないよ。それだけの金でも十分だよ」
「いや、これからくる者たちのためには十分じゃないよ」
「ごめん」
「良いよ、明日もらいに行く、一緒に行こう。そして、太郎の口座に入れる」
「俺の、だって君達で稼いだ金だよ。口座だって持っているだろう」
「いや、彼から集まる金は太郎の会社の口座に入れる」
「えっ、会社なんて持ってないよ」
「作ってもらう。俺たちはその従業員になる」
「俺が社長、う~ん実感がない」
「まだなっていない」
「それはそうだけど」
「いや、お金はどんどん増える。次郎が株で稼ぐし、また宝くじもあるし」
聞いている俺は、頭がぼーっとしてきた。
「大丈夫か」
「いや、なんでもない」
「集めた金で、これから来る者たちのため、色々な施設も建てる必要がある」
「どんな施設」
「俺たちも、病気はする。しかし、人間の病院にはいけない。俺たちのための病院が必要なんだ」
「三人とも元気そうだけど、病気になるんだ」
「ああ、病気になる者はあまりいないが、この星でかかるかもしれない。前から調べていたけれど、まだ完全じゃない」
「そうだよね。地球上での移民だって病気にかかる恐れがあるんだから、惑星移民もかかるよね」
「そういう事だ。そろそろ、金をもらいに行こう」
「そうしよう」


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