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13.2019/09/05  語田早雲です。 [笑う小説]

13.金は俺の金になった。まあ、通帳の中だけの事だ。
帰り道、俺は心配事を打ち明けた。
「おれ、会社の作り方なんて知らないよ」
「大丈夫だ。俺が作る」
「あっ、そうだね。頼む」
「いや、俺たちこそ頼む。感謝しているよ」
「いや、気にするなよ。俺こそ三人に会えて良かったと思っているよ」
「ありがとう。俺たちは君がいなかったら、ここにいられないんだ。これからもよろしく頼む」
「わかった。出来るところまでやってみる。ところで、俺の会社って、何の会社になるんだい」
「まあ、不動産屋で、株とかもやっている感じかな」
「そうだね。これからくるみんなの住むところを確保しておかないと」
「家も建てるし、子供たちの学校も建てないと」
「なんか、わくわくしてきた」
「そうだね。頑張ろう」
「おう」
というわけで、次郎と別れ、二人のいそうなパチンコ屋に行った。二件目にいた。相変わらずだしている。声をかけようとする前に、新次郎がふり返った。にっこりとほほ笑んだ。最近になって、宇宙人も微笑むようになってきた。
「やる」
「うん」
「じゃあ探そう」
「うん、たのむわ」
俺は新次郎の後をついて行くだけだ。
そしてその日も稼いだ。俺の稼ぎは少なかったけど、金は全部俺が受け取った。あした、銀行へ持っていくためだ。
アパートに戻ると一人になった。なんかさみしくなった。こんな気持ちになったことは、今までなかった。人間って不思議だ。宇宙人はもっと不思議だ。もっと深く考える必要があるような気がするが、何も浮かばないまま、布団に入った。
新次郎に起こされた。
「おい、地球人早く起きろ」
「やあ、お早う」
「いや、だいぶ遅い。俺たち先に行く、席は確保しておくから、急いできてくれ」
「わかった。直ぐ行くよ」
俺の部屋に新次郎はいたが、麗はいない。先に行っているんだろう。俺も寝ぼけまなこで起きて、パチンコ屋に向かった。朝食はまだだ。向こうで取ることにした。
急いでいる途中で、どこに行けばいいの知らない事に気が付いた。飛び飛びで並んだ、三店のパチンコ屋の真ん中に、何となく入った。そしてなんとなく、パチンコの列も選んで進むと、新次郎と麗を見つけた。二人が同時に俺を見てみやりと微笑んだ。俺もにやりとしていた。なぜ、二人のいるところが分かったのか、分からない。二人の力だろうか、それとも俺の、いや偶然かも知れない。
新次郎が指さした、二つ離れた空いた席に座った。タバコが置いてある。そのタバコを後ろから手を伸ばして、新次郎が取った。
「タバコ吸うの」
「ああ、二日前から吸い始めた」
俺は頭が混乱した。
「だって、お前は宇宙じ………」じ、で止まった。
「いやぁ、こいつは癖になるな」と言いながら新次郎はにやりとした。
「体は大丈夫」
「大丈夫だよ。俺には全く害がないんだ」
「ふ~ん、宇宙人ってすごいね」
となりの親父が、俺を変な目で見た。
その日は稼いだ。俺が一番だった。と、言っても自慢はできない。新次郎の選んだ台だ。
そんな日々が一週間も続いた。朝早く、次郎と新次郎が二人で、俺を左右から揺すった。大きな地震が来たと思って、がばっと起き上った。
二人して「おはよう」と言った。二人の声がハモッていた。
「おはよ。今日はなんだい」
「会社をつくる。まず事務所を借りる。いまから行こう」
「えっ、もうそんな時間」
「いや、まだ8時ちょっと前だが、離れた場所が良いと思っているんだ」
「近い方が便利だけど」
「いや、みんなが近くに集まり過ぎるのも、目立つような気がするんだ」
「みんなって」
「これから来る仲間達だ」
「という事は、これからいっぱい借りるアパートやマンションのためにかい」
「そうだ、今の内は賃貸で良い」
「わかった。急ごう」
「おう、外で待っている」

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