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14.2019/09/06  語田早雲です。 [笑う小説]

14.二つとなりの駅についた。改札口を出て駅の待合室を出ると広場の右脇に不動産屋があった。
「調べたの」と、次郎に話しかけた。
「うん、人口も俺たちが住んでいる街よりは少ないが、工場が多いから人の出入りも多いし、急に人が増えても目立たないと思うよ」
「何十人ぐらい、この街に住ませるんだい」
「まあ、30人くらいかな」と、次郎が答えた。
新次郎は感心なさそうな顔をして、街のあちらこちらを眺めている
「少ないね」
「でも………」と新次郎が答えようとするときに、ドアが開いた。
「すみません」と、次郎が言った。次郎は中に入っていく。俺たちも後に続く。
机の前に座る、白髪交じりの年配のおじさんが、手を差しのべながら、「どうぞ」と言った。
「アパートを借りたいんですが」
「あなた方が入るんで」
「いえ、知り合いの夫婦です。赤ん坊もいるんです」と、次郎。俺は聞いていない。赤ん坊もあそこから出すんか、三人出して慣れてきているが、赤ん坊じゃお産みたいじゃないか。と、呆然としているうちにも、話は進んでいく。
「それじゃあ、見に行きますか」
「はい」と、次郎。
「今、車を出しますから、ここでお待ち下さい」と言うと、おじさんは外に出た。しばらくすると、ドアの向こうに、小型のバンが止まった。
5分ほど流れゆく家々を眺めていると、畑が広がった。街の外れだ。その端に、同じ形の一階建ての家が田の字を描いて四軒並んでいた。アパートじゃなかった。
「2軒空いていますので、両方見てください」との不動産屋さんの指示に従い、どちらも見た。
どちらも、同じ間取りで、どちらもそれなりに綺麗だったけど安普請でもあった。
「どちらにしますか」の問いに、二人は茫然として、答えない。
仕方がないので、「日当たりのいい、奥の家にします」と、俺が答えた。
二人を見ると、どうでもいいような顔をしている。まあ、確かに同じ家だ。
車は事務所の前で止まった。中に入ると、いつの間にか、店の中で、のんびりとお茶を飲んでいる婆さんが、軽く会釈をした。俺たちも軽くしながら中に入った。不動産屋が戻り。契約が始まった。
電車を待っている時に、俺は次郎に聞いた。
「いつ出すんだ」
「三日後に入れるんだから。三日後だろう」
「どこで」
「俺たちのアパートで」と、次郎。
「そんな所で大丈夫か」
次郎も新次郎も俺に不審を抱いているかのような顔つきで見つめた。
「なんだよ、二人して。俺の腹から出すんだろう」俺の声は大きかった。
前を歩く俺が好きなタイプの若い女性が一瞬横目を走らせて俺の顔を見た。
「いままでもやってきたろう。今度だって同じだ」と、新次郎。横で次郎もうなずく。ちょっと離れた所に立った、さっきの女性が聞き耳を立てているように見えた
「だって、赤ん坊が泣き始めたらどうするんだ。他のアパートの住人に知られるじゃないか。まずいだろう」
「赤ん坊が泣くって、何を言っているんだ」
「はあ、君たちの赤ん坊は泣かないの」
二人して、人間のように頷いた。でも答えは、どう見ても人間の答えではない。
太郎は、理解していると思っていたが、彼らとはかなり距離があると、このときは思った。
解説です:もう解説は忘れてばかりいるので、やめようと思います。ちょっと笑える話を、時々入れたいと思います。どういう訳か分かりませんが、笑える話が浮かんで来て、その時は面白がるのですが、メモにも取らないので直ぐ忘れます。今日から出かけるときはメモ帳持参にします。ただし毎日はできません。

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