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16.2019/09/10

16.あれから、一週間近くたった。俺たち二人はパチンコばかりやっている。麗は、鈴木夫婦のところに二日ごとに行っている。赤ん坊は泣かないから、他のつの家の住人には話していないと言っている。あの家を選んだのは失敗だ。三人とも頭は良いが、しょせん宇宙人だ。人間の常識を知らない。俺が頑張らないとだめだ。
鈴木一郎さんの仕事もない。早く事務所を借りないと。そんな事を思いながら顔を洗っていると、「おはよう」と新次郎の声がした。音を立てないで、部屋に入ってくる。この部屋のドアの癖を覚えている。鍵がなくても開けられるのだ。
「おはよう、今日は早いね」
「事務所を次郎が勝手に決めていたよ。相談なしで決めるなんてまずいよな」
「まあ、そうだけどまだ一回目だから」
「会社名も決まっていて、事務所の家具までみんな入っている」
「驚かせようとしたのかな」
「いや、俺たちは筒抜けだから、隠せないよ」
「じゃあ、新次郎も、俺にも隠していた事になるじゃないか」
「いやあ、太郎が人間だというのを忘れちゃったんだよ」
「う~ん、それ喜んでいいの、それとも怒るべきなの」
「俺に、わかるわけがない。それより、美味しいコーヒーの店があるから、そこで朝食をとってから、事務所まで歩いていこう」
「ちかいの」
「遠くはない」
と、いうわけで、俺たち二人はのんびりと朝食をとり、事務所に向かった。
「次郎は、会社にいるの」
「ああ、昨日から行っている。まだ戻っていない」
「会社ができたんだから、もうパチンコはやらないんだろう」
「いや、仕事としてやればいいんだから、やれるよ」
「でもさ、俺社長をしなきゃならないんだろう。社長がパチンコする訳にいかないよ」
「大丈夫だ俺もやるし、他の従業員もやれば金は稼げるよ」
「次郎が、なにを考えているか、分からないのか」
「それが全然何も考えていないみたいだ」
「それじゃあ、パチンコしかないのか」
「会社借りて、パチンコって訳にいかないよな。もうすぐ会えるから、相談しよう」
「うん」
会社の前についた。3階建のビルの一番上に原田商事という看板がある。
俺の名字だ。という事は、俺を社長にするつもりだ。これは困った、社長ってなにをすればいいんだ。
しかし、これだけのビルを良く借りられたものだ。
良く考えたら、次郎さんは口座を持っている。それも、この会社の口座だろう。株でかなり稼いでいるんだ。
「次郎さんは株で稼いでいるのかな」
「うん、かなり稼いでいるよ。金額までは分からないけど、俺たちのパチンコでは届かないほどの額だ」
「俺にもそういう能力が合ったら良いのに」
「能力と言うほど物もではないと思うな、たぶん、次郎は人間の考えの癖に気が付いているんだよ、まあ、俺は良く分からないが」
「3階だ。入ろう」
「うん」
エレベータで上がった。スチールドアを開けた。次郎さんが、パソコンに夢中で気が付かない。と、思っていたら、「ちょっと待って」と声を掛けられた。たしかにちょっとだった。
「いやあー、社長お待ちしていました」
「やっぱり社長か、看板見てそうじゃないかと思ったんだけど、俺社長なんて出来ないよ」
「とんでもない、太郎さんにピッタリの仕事ですよ」
「俺のような男にピッタリって、なにをすればいいんだ」
「なあに何もしなくて良いんです。毎日、新次郎と一緒に、パチンコでもしていればいいんじゃないですか」
「はあ、それが社長なの」
「この会社は、他の会社とかかわらないで仕事をするんで、どことも
お付き合いしないんです。まあ、それでも向こうから来るかもしれません、その時は会社にいてください」
「俺にできるのかな~」
「大丈夫、誰にも会わせませんから」
「安心はしたんだけど、なんかさみしい」
「じゃあ、パチンコは新次郎と麗に任して、社長室で勉強でもしてください」
「それも良いね。じゃあパチンコもするけど勉強もするわ」
「どうぞ、社長のお好きなように」

ショートショート
「どうです。今すぐコーヒーを沸かしますから、飲みませんか」
「はあ、インスタントはちょっと」
「とんでもない。僕はインスタントなんか飲みませんよ」
「はあ~、でしたら沸かすじゃなくて、入れるんじゃないですか」
「まあ、そういう言い方もありますが、このコーヒーは違いますね」
「何か特別なコーヒーなんですか」
「いえ、違います。三日前に入れたコーヒーです」
「帰ります」

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